『レベルE』No.002「Run after the man!」&No.003「Riskey Game!」 感想

 比較的、穏やかだった第1話に対して、第2話はあまりにも冨樫先生らしい、とてつもない急展開。どうしてこんなに話がビシバシ進んじゃうわけ? と幽遊でこんな状況には慣らされていたはずの私もあっけにとられた。
 読者をふりまわすことにかけては、今のマンガ界で冨樫先生の右に出る者はきっといない(と思っているのは私だけじゃないはずだ)。
 で、いきなりのハードな展開にめまいを感じながらも、「これはハードSF路線でいくつもりなのか、アクション路線でいくつもりなのか」と思っていたら、なんとびっくりの逆転劇……しばらくあっけにとられたその後で、大声を出して笑いたくなったが、朝の通勤電車の中だったので理性でこらえた。
 クラフト隊長の“常に想像の斜め上をいく奴”という王子さま評に、心底うなずくと同時に、「これってもしかして冨樫先生ご自身のことでは」と思ってしまったのだが、まさしく冨樫先生は常に“想像の上“ではなく“想像の斜め上”をいきたがるお方。
 私には、「いいのか? 本当にこれで全てが解決したのか? それでお前は納得できるのか?」というクラフト隊長の台詞が、そのまま冨樫先生から読者への意地悪な問いかけに聞こえてしかたがない。
 ええ、「冨樫先生かやることだから」ですべて納得できちゃいますよ、私は(大笑)。

 「元気ですか?楽しいですか? 最高ですか? 特に何もないですか?」という王子さまの手紙をみて、「冨樫先生ってなんでこんなに文才があるんだろう」と思ったのは私だけでしょうか?
 私、本気でこの文才が欲しいと思いました。

 どんどんガラが悪くなる雪隆くん(苦笑)。しかし、この王子さまとつきあっていれば、誰でもこぅなるのかもしれない、でも、クラフト隊長と本気で喧嘩してたところを見ると、美歩ちゃんの言う通りもともとチンピラ体質なのかも。
 野球部とかにはいってそこそこの実力を持っているあたりをみても、この人、体力的にも精神的にもかなりタフなんだよ、きっと。高校生の分際で一人暮らしを許してもらえた、というあたりから推察するに、雪隆くんは野球での推薦越境入学者。さらに1年生でレギュラーをとれるあたりを見ると、それなりに野球がうまいはずなんだ。
 雪隆くんはこれから先どうころんでも、したたかに世間を渡っていくんだろうな。

 クールでいつもクラフト隊長をなだめる役にまわっているらしいサド隊員は、実はクラフト隊長を説得しながら、自分を説得していたんじゃないかと感じる。「これは任務です」と言いながら「そうだ、これは任務なんだ。我慢、我慢」と心に言い聞かせてたんじゃないかと思うと、本当に不憫でならない(クラフト隊長もサド隊員も)。
 クラフト隊長はサド隊員がいたからこそなんとかここまで正気を保ってこられたんだろうし、サド隊員もクラフト隊長がどうしても見捨てられないんだろうな。忍耐と涙をわけあうこの2人の努力はきっとむくわれ……ないだろうな(気の毒)。
 2人ともきっと心の底から王さまと王妃さまを敬愛しているのね。それだけにあの王子さまを見ていると○×☆△(訳不可能)なことになるのね。
 王さまと王妃さまからあの王子さまが生まれたことを、泣くほど悔しがっているサド隊員……ああ、その泣き顔が見たい! ……ではなく(つい本音が(笑))、ああ、なんてけなげなやつなんだ、こういうむくわれない努力をしている男が私はすんごく好きだ(はたで見てるだけならね)、そんなわけで、それだけでサド隊員が好きになってしまった私は……やはり性格が悪いのだろうか?

「今度はどうだ、サド隊員」「隊長!! まだダメです」……クラフト隊長とサド隊員は実にいいコンビだ(笑)。

 王子さまがクラフト隊長に対してありとあらゆるいやがらせをしている、という話を聞いた時、私は直感した。
 そのいやがらせの第1弾は、クラフトさんを自分の護衛隊長に任命したことに違いない!
 いや、絶対にそうよ。だって、殺したいほど嫌いな奴と四六時中、顔をつきあわせて、理不尽な命令をいちいちきかされて、おまけにからだをはってその命を守れだなんて、これ以上のいやがらせはないと思うわ。

 ディスクン星人さんやエラル星人さんたちは種族あげての野球狂だそうだが、自分たちではやらないのだろうか? それとも見るのが好きなだけで、実際にやるなら野球よりも喧嘩の方が好きなのだろうか?
 たかだか高校野球のはしっこにひっかかってる雪隆くんがあの扱いならば(まあ、山形県勢初の甲子園ベスト8を狙ってるせいもあるんだろうが)、野茂やイチローは神様だろうな。野茂のサインボールやイチローのサインバットをめぐって地球圏外で戦争ぐらいやるかもしれない。

 あの見開きを見て考えたこと。
1.三原順のようなことを……(『はみだしっ子』のあの字だらけページを最初に見た時はおもわず本を閉じたな)
2.これはやっぱり読まなきゃいけないんだろうな(活字中毒を自認する私だが、マンガを読んでいる最中にこんなものを見せられるとさすがに)
3.冨樫先生ってば何、考えてるんだか(考えてることがわかるようになったらオシマイかもしれない……って、すっごい失礼(苦笑))
4.冨樫先生ってばよくこれだけ書いたわね
5.王子さまって底なしに性格悪いわ
6.冨樫先生、これ、すっごくうれしそうな顔して書いたような気がする……
7.この字の大きさじゃ、コミックスになって縮小されたら読めないそ!(コミックス収録時には4ページに分割されるのでは? というのが一番、有力な説である)

 王子さまは、あのすっとぼけ方からしてコエンマさまに似ていると思っていたのだが、今回の王子さまの所行(笑)を見て私はおもわず心の中で謝った。
「すみません、コエンマさま! あなたはこんなに性格、悪くないです! こんなのと一緒にしてしまって、本当にすみませんでした!」

 あのドンデン返しを知った時にね、「ああ、またしても冨樫先生にかまされてしまった」と思ったのよ。
 「だまされた」とか「はめられた」とか言うよりも、「かまされた」ってのがピッタリあうような気がするんだけどね……なんとゆーか、私には「冨樫先生ってばもしかして、こういう読者の反応を予測して、裏で大笑いしてるんじゃなかろうな」という被害妄想があるらしいのね。
 これは幽遊の頃からすでにそうで、私は「幽遊の読者に“平穏”の2文字はない」とか言って、なんだか皆様に異様に納得されてしまったことがあったんだが、あれは「冨樫先生のファンに“平穏”の2文字はない」と訂正したいと思うわ。
 また、そういうことを言いながらも、こういう展開を小踊りして喜んでいる自分がいるのも事実だしねえ……。まあ、こういうのも、冨樫先生が戻ってきたなあ、という実感があってよろしいかもね(ほとんどヤケである)。