『幽遊白書』限界への試練!!の巻 感想
今週の心の叫び
この展開はいったい…
不親切なあらすじ
プーちやんにのりうつった幻海師範は、戸愚呂に「幽助の本当の力を引き出したいのなら、やつの仲間を殺せ」と進言した。そして、戸愚呂は必死でそれを阻止しようとする幽助を振り払い、桑原を殺す。哀しみにくれる幽助は、戸愚呂にさむけを感じさせるほどのパワーを発動させるのであった(あのすさまじい展開をこんな短い文章にまとめちやっていいんだろうか……)。
桑原くんが死んだ
桑原くんが死んだ。
桑原くんを守るために戸愚呂と闘おうとした蔵馬と飛影ちゃんを退け、桑原くんはたった一人で戸愚呂に立ち向かい、あっさりと殺されてしまった。
そして、彼は幽助だけに言葉を残した。最愛の雪菜ちゃんへの言葉も、姉である静流さんへの言葉も残さず、ただ幽助だけに言葉を残した。
なんと言ったらいいのか……。あまりの意外さに声も出ない、というのが一番、正しいかもしれない。
どうして? どうして、桑原くんが死んでしまったわけ? えっ? それはないんじゃないの? 冨樫先生も桑原くんはお気に入りのキヤラだって言ってたじゃないですか。
あんまりだ! あんまりだ! 桑原くんを返せ! 晴海かTRCへ行って署名運動するぞ!(言葉も出ないと言ったわりには……)
許せない
幽助は幻海師範が死んだ時「おれは戸愚呂を許さねエ」と言い、桑原くんを目の前で殺された時「誰より自分自身(おれ)が許せね-」とつぶやいた。
両方とも加害者はもちろん戸愚呂で、幽助には何の責任もない。けれど、幽助は桑原くんの死の責任のすべてを自分一人でしよいこむつもりでいる。
静流姉さんも雪菜ちゃんも、そしてもちろん桑原くんも、絶対にそれが幽助のせいだなんて思っていない。そして、それはきっと幽助自身も知っている。
それでも幽助は自分を責める。自分の力が足りなかったことこそがすべての原因である、と自分を責めたてる。
それはしかたないことなのかもしれない。幽助が戸愚呂よりも強かったら、当然、桑原くんは死ななくてすんだ。
だけど、それを言ってしまったら、蔵馬も飛影ちゃんも(絶好調時の飛影ちゃんだったら勝てるんだろうか?)、そして桑原くんも戸愚呂より弱い。おそらく陣と凍矢が力を合わせても戸愚呂には勝てない。そう考えていくと、皆、同罪になってしまう。だから悪いのは戸愚呂だけだ。それ以外の誰も悪くない。
覚えてる? 幽助。幻海師範が死んだ時、コエンマさまに「命をかけた我の張り合いにどのツラさげて横やりいれる気たった」って叱られたでしょ。今回の桑原くんの行動も桑原くんにとっての“命をかけたツッパリ”だった。
桑原くんが言った「根が負けずぎらいでな」っていう言葉は、そういう意味だったんだと思う。
だからね、幽助。あんな、いっきょに10才も老け込んじやったような、苦しそうな顔をしないで。みんなが幽助のことを心配しているよ。
幻海師範の意図
「幽助の仲間を殺せ」と戸愚呂に提案した幻海師範の意図がどのようなところにあるのかは、今のところまったく不明。コエンマさまにすら、その意志を推し量ることはできない。
修羅の世界を生き抜き、桑原くんと同じく、圧倒的な力の差を知りながら戸愚呂に立ち向かって死んでしまった幻海師範のことだから、海よりも深い考えがあるのだろう(そうでなくては桑原くんの立場がない)。
それにしても、幻海師範の「これがおまえの首つっこんだ世界なんだよ、幽助」という台詞にはまいりました。
だってね、幽助は今まできっと、そんなこと考えていなかった。ただ、目の前の敵を倒していくのに懸命で、そんな深いこと考えていなかった。
幽助はなんだかんだ言っても、まだたったの14才なんだよ。考えが甘くてもしょうがないんだよ。推定70才の幻海師範とは人生のキヤリアが違いすぎるんだから。
蔵馬は戸愚呂について「自分と同じ強さを幽助に求めている」って言ってたけど、それはおそらく幻海師範も同じ。
自分と同じ精神的な強さを幽助に求めている。
幽助は幻海師範から霊光玉を受け継いだ瞬間に、幻海師範の弟子ではなく、幻海師範と対等の立場に立つ者になってしまっていた。幽助はあの瞬間に、ただの14才に戻ることができなくなってしまった。
だけど、絶対に幻海師範が戸愚呂と道を違えてでも守ろうとしたものは、幽助か守ろうとしているものと同じはず。ならば、一人が犠牲になることで皆が助かるのならそれでいいじやないかってのは、あまりにも幻海師範らしくない。だから、幻海師範にはなにか深い考えがあるはずなのだ(なかったら幻海師範のファンをやめる)。
命かけてくれたな
私はなぜか桑原くんの「コエンマ。あんた浦飯に命かけてくれたな」という台詞が、気になってしかたがない。
「かけたな」ではなく「かけてくれたな」という言いまわしをしたところに、「うちの幽助に命をかけてくれてありがとよ」みたいな、響きを感じとってしまったのだ。
あの台詞に「自分はコエンマなんかよりもず-っと浦飯に近いところにいるんだぜ」という桑原くんの主張を読みとってしまったのだ。
桑原くんは幽助を倒すことを目標にしていた。今のように行動を共にするようになっても、それはかわらなかった。
けれども、桑原くんがどんなにどんなに強くなっても、幽助はさらにさらに強くなってしまって、二人の力の差は逆に広がっていくばかりだ(ここらへん戸愚呂と武威の関係に似ている)。
それでも桑原くんは打倒幽助を目指して、これからも強くなり続けていくはずだった。もっともっといい男になるはずだった。
だから、冨樫先生。桑原くんを生き返らせて。