『幽遊白書』決定的な違い!!の巻 感想
今週の心の叫び
冨樫先生が泣かせる
不親切なあらすじ
桑原くんを目の前で殺され、幽助はついに本当の力を発動させた。喜ぶ戸愚呂に対し、幽助は叫ぶ。
「オレはあんたと違う」と。
人間を捨てた戸愚呂の強さと、何も捨てないための幽助の強さが正面からぶつかる。
どうなるんだ、決勝戦。以下、次号(なんと書いてよいのかわからない今週の展開)。
扉絵が泣かせる
今週の扉絵は、数ある幽遊の扉絵の中でもっとも哀しいものだった。
扉絵が全然、出てこなくて……驚くほど哀しげで大人びた表情の幽助が辛くて……ひどく落ち込んだ気分でページをめくったとたんに、フェイント状態で現れたあの扉絵。
なんと、6ページ目にしてようやく現れたその扉絵を見た途端に、私は硬直してしまい、そのまま言葉もなく、扉絵を凝視していた。
哀しかった。哀しかった。ただひたすら哀しかった。
幻海師範がお亡くなりになった時、幽遊を読んでてこんな哀しいことは、もう決しておこらないだろうと思ったのに、あの扉絵は、幽助か瀕死の幻海師範にむかって「よっしゃ。今すぐみんなのとこ連れてくからな!! 蔵馬がなんとかしてくれるさ」と言った時の数倍、哀しかった。
先週の倒れる桑原くんに駆け寄り、おもわず顔をゆがめた蔵馬の表情よりも哀しかった。
中央のにこやかな4人(?)のスナップショツト。
彼らが一つのコマにおさまってじゃれあっている絵なんて、一度も見たことはなかった(たくさん見ているような気がしていたけど、よく考えてみるとあれは同人誌で見たんだった)。だって、本編の中で4人が一緒のコマにおさまっていること自体マレだし、とっても仲の良い4人なのに、なぜか彼らがなごやかにおしゃべりをしているシーンというのも、本当に少ないのだ。
だから、他の時だったらあれは、うれしくてうれしくてたまらない絵になっていたはずだった。きっと、顔のゆがみがなおらなくて、皆に「なんかうれしいことでもあったの?」とか聞かれてしまうようなカットだった。
やけに子供っぽい顔して笑っている蔵馬(最近どうも忘れがちだけど、彼だって人間としてはまだ15才なんだよね)。妙な指のポーズをつくってよろこんでいる桑原くん。そして、ふざけて飛影ちゃんにからんでいる幽助と、怒ったような表情をつくっているわりに、いやがってはいない飛影ちゃん。
本当にこんな絵を見せてもらっちゃっていいのかしらんと思うくらい、うれしい絵だった。
だけど、それだけにあの扉絵は哀しすぎた。桑原くんの背中は哀しすぎた。あのあおり文句は哀しすぎた。
「まかせたぜ…浦飯…」
あおり文句までが私を泣かせる……。
私は何年ぶりかで、マンガを読んで、たった一枚の扉絵を見て、涙ぐんでしまった。
あれが電車の中でなくてよかった。まだ誰もいない早朝の会社でよかった(私はたいていの場合、ジャンプは会社で読んでる)。
私は桑原くんが生き返ると思っていました。
幽助みたいに生き返ってくれるんだと信じていました。
けれど、あの扉絵を見て、自信がなくなってしまいました。
誰か、桑原くんは生き返ると私に言ってください。
冨樫先生、お願いです。ご都合主義でもなんでもいいから、どうか、桑原くんを生き返らせてあげてください。
桑原くんは幽助の大事な大事な親友で、飛影ちゃんも蔵馬も、残念なから彼のかわりにはなれない。幽助が14才の男の子であり続けるために、桑原くんは必要不可欠な存在なの。
それに、雪菜ちゃんのことだって、本当にこれからなの。桐島くんたちだって、永吉だって、桑原くんの帰りを待っているに違いないの。
だから、だから、桑原くんを行き返らせて。
お願いだから、生き返らせて。
<span style="font-size:large;"><u>幻海師範の教え</u></span>
幽助が戸愚呂の強さに憧れているということは知っていた。だって、幽助はいつでも、強くなることを望んでいたから、強い者に憧れるのは当然のことだと思っていた。
戸愚呂は闘いにしか生きることができないものにとって、一種の理想像なのだろう。武威さんも鴉さんも、その強さに惹かれ戸愚呂につかまってしまった。飛影ちゃんも「幽助にゆずるんじゃなかったぜ」という台詞を吐いているところを見ると、やはり戸愚呂に心惹かれるものがあったようだ。
だけど、強さを得るために戸愚呂が捨てたもの、仲間や人間としての生を、幽助は捨てなかった。それはきっと、50年前に幻海師範が捨てることを拒んだものとまったく同じだったのだろう。
そして、幻海師範は幽助に教え続けた。
なにかを捨てなければ得ることができないような強さは、本当の強さじゃない。自分だけのための強さは本当の強さじゃない、と。
幻海師範は昔、戸惑呂に捨てられた。
戸惑呂がより強くなるために、仲間ともども切り捨てられた者だった。だから、なおさら幽助にはそういうことを強く教えたのだろう。
幽助の「おれは捨てね一!! しがみついてでも守る」という言葉は、幽助が真の意味で幻海師範の後を継いだ、ということを宣言したことになるんだと思う。
幽助はようやく幻海師範の跡継ぎとなることができたのだ。
幽助はきっと、目覚めることが遅れたがために、桑原くんを殺されてしまったことを、悔やみ続けるだろう。もっとも苦しい思い出として、桑原くんの死を抱え続けていくんだろう。
それでも幽助は仲間を守り、仲間に助けられ、そして……これからも苦しい闘いを続けていく。
一度、負けたらおしまいだから。一度、逃げてしまったら、どこへも行くことができなくなってしまうから。
だから、幽助はもう迷わない。自分が歩むべき道をきちんと見定めることができたから。
陣にあんな哀しそうな顔をさせるような(陣の耳がしょぼくれているのを見るのはすっごく哀しいぞ)風はもう吹かせないと思うのだ。