『呪術廻戦』(第31話 また明日) 感想(明日が来ない子もいるけど、また明日)

今回のカラー表紙は宿儺のソロか。かっけえな。
芥見先生は茶系の色を使うのがお好きなのかしら。


領域が解けた理由がさっぱりわかってない虎杖。
とっさに走った思考の上澄みの、「限界」「失血」は虎杖自身の状態確認、「七海」「生存」はとりあえず七海さんの無事を確認、「領域」「殺せる」は真人のことだろうね。
で、すぐに真人を殺しに行ったところの表情がめっちゃ恐い。


真人の方は領域で呪力を消費しまくってたけど、ちゃんとしのぎきったな。
やっぱり戦闘センスが高いんだな。
虎杖が失敗したのをみて、すぐに動いた七海さんもすごいけど。

虎杖、あっけにとられたのはわかるけど、七海さんについていかなかったんだな、と思ったら倒れてた。
いや、そういえば体に穴があいてたよね。
本当にギリギリまで動きまくってたんだな。


真人は、宿儺のやっかいさを思い知って、利用することをあきらめるんじゃないかと思ってたんだけど、逆にどうしても欲しくなったようだ。
でも、宿儺は「呪いの時代」とやらに興味はなさそう。
宿儺様は伏黒しか眼中にないからな! とか思ったんだけど、真人が虎杖への嫌がらせで伏黒に手を出したりしたら、どういう対応に出るんだろうとか想像するとめっちゃ笑える。


高専の遺体安置室(?)がでてきた。
本当にずいぶんとたくさんの人が死んでたんだな。
あの袋の中に、「人間」の形をしたものはほとんどないんだろうな、あれでは遺族の元に帰ることもできないだろうな、と思うとキツいものがあるよね。
吉野くんがこの光景をみたらどう思うんだろうなあ。

七海さんは宿儺が真人を倒したことに気付いたか。
でも、それは虎杖の力じゃない。
これから先、かなりなことがない限りは、虎杖がみずから宿儺を呼び出すことはないだろう。
でも、その「かなりなこと」はきっと起こる……。


あれだけ「正しい死」にこだわっていた虎杖が、ここにきて「正しい死って何?」と、ちょっとうつろな目できいてきたところは、本当に胸がいたかった。
これまでだって、厳密に「正しい死」の定義などしてたわけじゃないだろう。
でも、直感的に「これは正しい」「これは正しくない」と判断をくだしてきたんだと思う。
そして、これからもそうやっていける、と根拠もなく考えていたんだろう。
でも、一度でも「何?」って思ってしまったら、直感を信じることができなくなってしまうんじゃないかな。
それが成長というものなんだろうけど、根拠もなく言い切っていた虎杖が好きだったから、どうしても「子供」だった彼を惜しんでしまう。

「引金を引かせない」(=死なせない)ことばかり考えても、吉野くん母子は救えなかった。
見知らぬ人の死の引金を自分で引くことを選んだのは、とどめをささなければその人の苦しみを長引かせるばかりだとわかっていたし、七海を助けなければいけなかったからで、そこに選択肢なんかなかった。

「俺は今日、人を殺したよ」と虎杖は言った。
家入先生になんと言われようと、虎杖にとってあれは人殺しなんだろう。

すべての死を正しく導くことなど不可能。
七海さんが言った通り、虎杖はそれでも「正しい死」を追い求める。
それは本当に苦しい生き方だろう。
それを見守る立場になる、伏黒や七海さんも苦しいことになるだろうけど、虎杖を見捨てることはできないだろうな。

呪術師と認めてもらえなくてふくれてた虎杖が「もう呪術師なんですから」と言われても、喜んでる様子がまるでみえないのもまた苦しいよなあ。
今は絶望を受け入れることに手一杯なんだろう。


吉野くんは学校を辞めたことになってるのか。
高専側でいろいろごまかしたんだろうな。
でも、吉野くんが死んでないことになってるのは、目撃してしまったあの女の子にとってはいいことかもしれない。
黙ってみているだけだったことは、これから彼女の人生に後悔として残り続けるんだろうけど、それが少しでもやわらぐかもしれない。

吉野くんの呪いは伊藤くんの左腕に残り続けるのか……。
自分の行為が、まわりまわってふたりの人間を死なせてしまったことを、彼は知らない。
罪を理解しないままで罰だけ受けてる。
これから彼はどういう人生を歩むんだろうなあ。

あの事件がどう片づけられたのかはわからないけど、少なくとも先生と伊藤くんは、吉野くんが実行犯だということを知っているんだよね。
吉野くんは先生に「ちゃんと見ててね。これまでのことも、これからのことも」と言った。
「まずは見えていなかったものを、ちゃんと見る」という先生の言葉はそれを受けてのものなんだろうな。

この先生、無神経なところはあるけど、そんなに悪い人とも思えなかったんだが、やっぱりそうだったんだな、と思う。
吉野くんが、この先生を少しでも信じて、相談をしていれば、吉野くんは母親を道連れに死ぬことはなかったのかもしれない。
そう考えると本当にキツい。

先生を信じていれば、虎杖を信じていれば……吉野くんは救われていたかもしれないのに、彼が信じてしまったのは真人だった。
吉野くんが受けていた痛みを考えれば、人間を信じることができなかったのも無理はないと思う。
そんな彼が人間ではない存在にすがってしまったのも、わりと納得できる。
でも、どうにかならなかったのかな、と思ってしまうんだ。
吉野くんのためにも、吉野くんの母親のためにも。
そして、吉野くんの死を引きずり続けるであろう虎杖のためにも。
吉野くんには虎杖を信じて欲しかった、と思ってしまうんだ。


今回は最後のコマに「第一部 完」って書いてあってもおかしくない感じだったな。
次回から交流会になるということは、ようやく伏黒と野薔薇ちゃんの出番か。
野薔薇ちゃんにはぜひとも、ヘコんでる虎杖に飛び蹴りかましてもらいたい。


ところで、巻末コメントによると初代芥見先生がお亡くなりになったようです。
とても楽しい方だったので、本当に残念です。心からお悔やみ申し上げます。
そして、二代目芥見先生のご健康とご活躍を心からお祈り申し上げます。