『幽遊白書』一番の望み!!の巻 感想

 今週の心の叫び
いいの…幸せだから…

不親切なあらすじ

戸愚呂を倒した幽助は、駆け寄ってきた仲聞たちに問いかけた。
「オレ……生きてんのか……」
勝利の代償となった桑原を思い、途方にくれる幽助。そんな彼の前に現れた踊る桑原(笑)。
桑原は死んではいなかった。幽助の底力を出させるために死んだフリをしていただけなのだ(驚かせないでよ……)。
そして、賭けに負けた左京はその野心とドームを道連れに消えていく。
そして、暗黒武術会は終焉を迎えたのであった。
めでたしめでたし(……となるのか?)。

桑原くんが……

桑原くんが……生き返ってしまいました。
あれだけ「桑原くんを生き返らせて-!!」とわめきちらしていた私が言うのもなんなんですけど…だましたわね!
いやあ、すっかり冨樫先生に踊らされちゃいましたよ。いったい、いつになったら冷静な目でマンガが読めるようになるんでしょう……。これだから、「それだけ幸せそうな顔してマンガ読む人を見たことがない」なんて言われちゃうんですよ。私は。
まったく、こんなに簡単にだまされてしまう読者は、マンガ家の宝だと思うわ!(ひらきなおっている)
でも、いいの……。だまされても。
桑原くんが生き返ってくれて、とーっても幸せだから……(笑)。
お願いだから、二度とこんなことはしないでくださいね、冨樫先生。幽助も飛影ちゃんも蔵馬も殺さないでね。陣も凍矢も酎も鈴駒も(以下、延々と続く)、誰も誰も殺さないでね(無理な注文とはわかっているんですけど……)。
だけど、きっと桑原くんもバツが悪かったのよね。
幽助が「桑原になんて言えばいい?」なんて言いながら、目から青春の汗を流しているところに姿をあらわすのは、大変な勇気が必要だったのよね。
だから、あんなふうに踊りながら「よっ!元気?」なんてふざけてみせたのよね。あそこでシリアスな顔して「浦飯。よくがんぱったな」なんて、言えるわけないわよね。
せいいっぱいおちゃらけてみせた桑原くんが、愛しくってたまらないわ(笑)。

蔵馬ときたら……

それにしても許せないのは、死んだフリした桑原くんではなく、それに協力した蔵馬である。
蔵馬! あなたってば、いくら正体がおキツネさまだからって、演技力ありすぎよ。
私は桑原くんに駆け寄った時のあなたの、あのいたたまれないほどの苦しげな表情にだまされたのよ。
確かに、桑原くんが幽助をだましたのはこれで2度目だけれど、両方とも共犯者はあなたよ! わかってるの? あなたの名演技がなければ、幽助だってきっとだまされたりはしなかったわ。
だけどね。幽助ってば、本当に単純なやつだから、そんなことにも気づかず、桑原くんは責めても蔵馬は責めないの。
だまされちやいけないわ! 幽助。責めるなら蔵馬よ!

飛影ちゃんてば……

桑原くんが復活してくれたうえに、待ちに待ったシーンを見ることができた私は、今、最高にハッピーな気分です。
待ちに待っていたシーンとはなんでしょう?
はい。決まってますね。例の飛影&雪菜の大接近ツーショット!! のことですよ。
普段から幽助×飛影か一押しよっ!などと叫んでいる私は、飛影×雪菜と桑原×雪菜が大好き(矛盾しているようだけど、本当だからしょうがない)なので、飛影ちゃんと雪菜ちゃんの接近を今か今かと待ちわびていたんです。
ああ、それなのに……それなのに……。つれない飛影ちゃんは、雪菜ちゃんを完全に無視して、知らぬ存ぜぬで押し通す構え。いったい、いつになったら……と思っていたら、暗黒武術会編終了間際にようやく見せてくれるとは。冨樫先生も商売上手!(なにが言いたいんだか)
いいですねえ。なんだかんだ言ってても、いざ、雪菜ちゃんの危機ともなれば「加速装置!」(ネタが古すぎますか?)で駆けつけちゃう飛影ちゃんのけなげさがたまらない。
おまけにそれが桑原くんの目の前ってのが超ナイス! 雪菜ちゃんの腰にまわされた腕も要チェックね(笑)。
さあ、どうする桑原くん。雪菜ちゃんには地上最強の小男がついているぞ! 負けるな桑原くん。雪菜ちゃんをかっさらうんだ! 行け行け飛影ちゃん。雪菜ちゃん相手なら近親相姦(あぶなすぎる……)だって許しちゃうぞ!(どっちを応援しているんだか……自分でもよくわからない)
しかし、あの場で「大丈夫か? 雪菜」なんて言わないあたりか飛影ちゃんらしくって泣かせますね。「ポヤポヤするな。行け」なんてそっけない言葉で、あくまでもシラをきり通そうとする飛影ちゃん。だけど、その言動のすべてが雪菜ちゃんへの愛を感じさせてくれて、私はもうクラクラです。
あの1コマを思い出すだけで、ヘラヘラ笑いを浮かぺてしまう……。
それにしても、あのツーショットの飛影ちゃんてぱやけに子供っぽい表情をしてましたよね(ホッとして気がぬけちゃったのかしら)。おまけにいつのまにか筋肉かなくなっちゃって、おそろしく腕が細くなってるし、身長も雪菜ちゃんとほとんどかわらないように見える……。
とても兄妹には見えません(笑)。
いいとこ同じ年の幼馴染み。なんだか『小さな恋のメロディ』な世界だったわ。

幽助だよね

今週の幽助は災難でした。
どシリアスになって、死にそうになって、ようやく戸愚呂に勝ったのに、桑原くんが復活した途端に、あれだけ大変たった闘いがすっかりギャグになってしまったんですもの……。
桑原くんのために流した涙(幻海師範が死んだ時ですら、涙は見せなかったのにねえ)を返せ! と、叫びたい気分だったでしょうね。
あんな姿を見せてしまった気恥ずかしさと、桑原くんの元気な姿を見れたうれしさと、皆にだまされた怒りがごちゃまぜになって、もうどうしていいかわからない状態で、とりあえず手近にいた桑原くんをポコポコにしてしまったのよね。
それにしても、あの時の幽助の顔は絶品だったわ。もう、ホラーとしか言いようがなかった(蔵馬が本気でおぴえていたものねえ)。だけど、悔やんでも侮やんでも取り返しがつかない、と思っていたものが、目の前で踊っていて、実はあれだけの大変な思いをした出来事がただの詐欺で、自分は仲間にだまされていただけだったんですものね。アメリカンクラッカーな涙を流したくもなるわ。
しっかし、その後がまずかったわよ、幽助。
いくら相手が蛍子ちゃんだからって、いくらせっぱつまった状況だからって、女の子の顔をパンパンなぐっちゃいけません。
蛍子ちゃんは幽助を心配して……心配しすぎてあんな状態になっちゃったのよ。そこまで幽助のことを心配してくれてるのよ、蛍子ちゃんは。
だからめんどくさいなんて理由で、蛍子ちゃんを殴っちゃいけないわ(しかし、その後で逆に幽助を殴り倒しちゃうあたりが蛍子ちゃんらしくって……)。
それにしても、轟音をたてて崩れ落ちるドームから、女の子におんぶされて脱出するヒーローってのはサマになりませんわ。実際。
けどね。久々に幽助と蛍子ちゃんのケンカを見て、幸せな気分になれたの。
ああ、ようやく14才の幽助に戻れたね。
がけっふちまで追い詰められて、痛い思いをして、生きているのが不思議なくらいの激烈な闘いを乗り越えて……泣いて、怒って、哀しんで……大変だったよね。
だけど、終わったんだよ。幽助。
きっと、またすぐに大変な目にあわされるんだろうけど、ひとまずは終わったんだよ。幽助。
たとえ、“一番の望み”はかなえられなくても、幽助の本気は、戸愚呂を救い、幻海師範を救ったんだと思う。
だから、今はこれだけを言ってあげたい。
お疲れさま。幽助。よくがんぱったね。

そして、幽助、桑原くん、蔵馬、飛影ちゃん。
暗黒武術会の優勝。本当におめでとう。

戸愚呂と幻海師範

ようやく、幻海師範が戸愚呂に「幽助の仲間を殺せ」と進言した理由がわかった。
幻海師範は戸愚呂、あれだけ激しく対立し、殺しあいまでした男、を信じていた。
戸愚呂は決して桑原くん(他の誰かになる可能性もあったんだけどね……)を殺さないと、信じていた。
そして、ヤバイ賭けにうってでたのだ(幻海師範にしてみれば、それほど分の悪い賭けではなかったのかもしれない)。
戸愚呂はきっと、幻海師範の思いを承知したうえでその期待に応えた。
二人は50年の対立を経てなお、信頼しあう仲間だったのだ。
これはちょっとすごいことだと思う。
幻海師範は信じた。
妖怪となり、大きく道を違えた戸愚呂には、昔と変わらぬ正々堂々とした格闘家の心を信じ、何よりも大切にしているはずの愛弟子の幽助には、どん底からはいあがる強さを信じた。
みずからの力で戸愚呂を救いたいと願い、それに失敗した幻海師範は、幽助が戸愚呂を救うことを願うことしかできなかった。
そして、二人をとことんまで信じたがゆえに、あのような行動にでたのだろう(つまり、あれは幽助と戸愚呂の闘いであると同時に、幻海師範と戸愚呂の闘いでもあったわけだ)。
はっきり言って、誉められた策ではなかったけれども(だって、幽助かかわいそうすぎるよ)、あれ以外に方法はなかったような気がする。
幻海師範はやっぱり強かった。
信じる者こそが強い。信じきれる者だけが強い。
それが、幻海師範の強さの秘密だった。
だけど、やっぱり哀しいよね。こんな方法でしか、戸愚呂は救われなかったんだから。

左京さんの夢

左京さんはドームを道連れに死んでしまいました。
あの、自分の命に対する執着心の薄さはいったいなんなんでしょう。コエンマさまが言った通り、保身を考えないやつほど恐ろしいんですよね。
“死”を恐れない彼の恐ろしさが恐ろしかった(なんだかよくわからない文章)一幕でした。
彼は人間界と魔界を結ぶ界堺トンネルを夢見ていました。その理由は「おもしろそう」と、実に簡単明瞭ですが、それにつきあわされる皆はえらい迷惑です。
100%の自分で闘いたいという、わりかし自己満足的な戸愚呂の望みはそれほど異常でもありませんが、人類すべてに地獄を味あわせたい(しかも、人間に対してひどく絶望しているというわけでもないらしい)という、周囲を巻き込む大迷惑な望みを抱いた左京さんという人は、結局、なにがしたかったんでしょうか。
最後まで薄笑いを浮かべ、別にどうするわけでもなく砂塵の中に消えていった左京さんは、あれはあれで満足していたんでしょうか。
彼は、自分の“異常”を自覚し、それを暴走させることに喜びを感じているように、私の目には映りました。わけもなく“破滅”を望んでいただけで、あまり深いことは考えていなかったのではないかと、思えるのです。
案外、あの戸愚呂が左京さんに従っていたのも、それゆえかもしれません。左京さんに“破滅”の匂いをかぎつけ、彼ならみずからを“破滅”させてくれるのでは? と期待したのかもしれません。
出番はめちゃくちゃ少なかったけれども、考えてみれば長い暗黒武術会編のすべてを始めたのは左京さんで、すべてを終わらせたのも左京さん。暗黒武術会編の影の主役は戸愚呂と左京さんであったと、私は思います。
結局、彼は何者だったのだろうかと考えても、答えはでません。
彼が戸愚呂に「狂っていたのは私だけだった」と告白したあたりをみると、あれはあれで、誰かに自分というものを知ってもらいたい、と思っていたのかもしれないと思うばかりです。
左京さんと戸愚呂。この二人はすぱらしい悪役でした。
だから、私は彼らを嫌いにはなれません。