『幽遊白書』戸愚呂の償い!!の巻 感想

 今週の心の叫び
戸愚呂って奥が深い

不親切なあらすじ

幽助たちが首縊島を去る日がやってきた。
幽助たちはホテルで出発支度をすませ、霊界ではコエンマと戸愚呂が最後の交渉を行っていた。
もっとも過酷な罰を望む戸愚呂と、それを留めようとするコエンマ。しかし、戸愚呂は考えを変えようとはせず地獄への道を辿り、その途中で現れた幻海師範の説得にも耳をかそうとはしなかった。
そして、船を待つ幽助たちの前に、生き返った幻海師範が現れる。
戸愚呂はみずからの罰を重くするかわりに、幻海師範を生き返らせたのだ。
かくして、長かった暗黒武術会編は終わり、幽助たちは首縊島を去るのであった。

浦飯チーム島を出る

久しぶりになごやかな4人組の姿にうれしくなった(蔵馬のコート姿がおしゃれだよね)。長かった暗黒武術会編だったけど、4人が揃う機会が少なくてちょっと寂しかったのだ。
幽助と桑原くんの馬鹿話しに、蔵馬か茶々を入れ、飛影ちゃんがそれを呆れながら見ている。という構図が私はとっても好きなんだけれど、なかなかお目にかかれない。
それにしても、幽助が落ち込むとわかっていて、真実を語る蔵馬の厳しさと強さが好きだ。無駄な慰めを言わない蔵馬は、本当に幽助のことを大切にしているんだよね。だから、妙な期待を持たせまいと、辛いことをちゃんと口にしてくれるんだよね。そして、幽助もそれをわかっているから、なんとか皆に気を使わせまいと努力をしているんだよね。
やっぱりこの4人はいいよね。4人で一緒がいいよね。
ああ、なんだかしみじみとしてきちゃった。
桑原くんが生き返ってくれて、本当によかったなあ。

長かった春休み

驚いた驚いた。
暗黒武術会は学校の春休みにあわせて行われていたんですね(一年ぐらい闘っていたような気がするって……実際、一年間、闘っていたわよ)。
あの優等生の蛍子ちゃんが学校をさぼってるのかしら? とか考えていたんですけど、春休みだったんですね。
左京さんが幽助たちの都合を考慮して、この日程を定めていたとしたらちょっとすごい(だけど幽助たちを殺すつもりだったんだから、そんなことする必要もなかったような……)。彼は気くぱりのススメな人だったんですね(……なんだかなあ)。
だけど、幽助は特訓のために2ヵ月も休んでいるし、それ以前の半月の長期欠席、さらには死んでいた間の分のお休みを考えると……3年生になれるんでしょうか? それとも、以前と同じように温子お母さまがお友達を連れて、校長室まで泣いて頼みに行くのでしようか。
謎だなあ。

コエンマさまだっ!

コエンマさま霊界バージョンが、久しぶりに登場いたしました。なんだか、この福々しいお顔を見るとホッとしますね。
ところでコエンマさまは、部下を顔で選んでいるんでしょうか。ぽたんはかわいいし、今週登場の和服姿のお姉ちゃんはすばらしく美人ですねえ(和服の着こなし方がおそろしく色っぽいの)。
とってもうらやましい職場環境。うちの会社もこうだったらよかったのに(ハンサムなお兄ちゃんよりも、きれいなお姉ちゃんを見るほうがうれしいって……変ですか?)。

戸愚呂の闘い

戸愚呂と幽劫の闘いはそのまま、戸愚呂と漬煉のリターンマッチだったのかもしれない。
戸愚呂は50年前、当時、どうしようもないほどの力を持った敵に遭遇し、仲間と弟子を殺された。
きっと、戸愚呂は大切な人達を守ろうと、傷ついたからだで何度も何度も、漬煉に飛びついては振り払われ、「オレは無力だ……」と思ったんだろう。桑原くんを救おうとする幽助と同じ、絶望と屈辱を感じたのだろう。
そして彼は“鬼”となって潰煉を倒し、その後、妖怪になった。人間のままでは潰煉を倒すことができなかったので、人間を捨てたのだ。
戸愚呂はそうして、50年もの間、傷つき続けた。そして、その傷は誰にも癒すことができなかった(幻海師範にもできなかった)。
彼を救うことかできたのは、彼よりも強い者だけだった。
彼はきっと潰煉になったのだと思う。そして、漬煉を倒す者(自分を倒してくれる者)を待ち望んだ。いつか誰かが、50年前の悪夢を修正してくれるのではと期待した。
そして、幽助(戸愚呂)は人間を捨てることなく戸愚呂(潰煉)を倒した。彼は人間のままで、妖怪たちの理不尽な行動に対して、立派に対抗してみせたのだ。そこでようやく、戸愚呂は本当に仲間と弟子のかたきを討つことができたのだ。
それが、いかに不自然な論理であるかを知りつつ、そうせずにはいられないほど、戸愚呂の絶望と挫折は大きかったのだろう。
しかし、いかに戸愚呂が傷ついていたからといって、戸愚呂のしたことが許されるわけがない。幻海師範の言った通り、戸愚呂は明らかに間違っていた。
彼の拷問としか言いようのない償いの仕方は、何も生み出さず、誰も幸せにできなかった。
多くの人間や妖怪を傷つけ(雪菜ちゃんを泣かせた罪は重いぞ!)、多くの運命を狂わせた(武威さんや美しい魔闘家・鈴木も、戸愚呂に運命を変えられちゃったんだよね)。彼のために幸せになった者など、どこにも存在しなかったのではないのだろうか。
そんな自分の聞違いを知っていたから、戸愚呂は何も言わなかった。
いいわけもしなかったし、許しを請おうともしなかった。ひたすらに沈黙を守り続けた。
本当に不器用な男だったのだ。
そして、一億年(一万年×一万回)の苦痛の果てに待つ永遠の“無”を望んだ彼は、最後まで自分を見捨てずにいた幻海師範に、微笑みかける。
その時、彼はようやく人間に戻ることができたのだ。

幻海師範の女心

戸愚呂との最後の会話を交わしている幻海師範を見て「ああ、女だよなあ」と思った。
男勝りで気の強い面ばっかりが出ていた幻海師範だったけれど、今号の幻海師範は本当にいい女だった。女特有の強さみたいなものをひしひしと感じてしまったのだ。
二人とも、一番、幸せだったであろう頃の姿に戻って、最後の会話を交わすことになったのに、戸愚呂は「もうオレなんかにかまうな」なんて冷たいことを言い、幽助のことばかり口にする。
そんな彼に、幻海師範はすねてみせた。あれは絶対にすねていた。
そして、そのうえで、「本当にバカなんだから」という短い台詞で彼を許してしまうのだ。
そんな幻海師範に、女特有の強さとしたたかさを感じる。
蛍子ちゃんもよく幽助にむかって「バカなんだから」と言うけれど、あれもきっと同じもの。そんな短い言葉で、なんの理由もなく彼女たちはしょうがない男たちを許してしまうのだ。
戸愚呂。あなたは本当に馬鹿な男だったと思うよ。
あんないい女に「あんたが年をとれぱあたしも年をとる。それでいいじゃないか」とまで言われたのに、それを振り切って、勝手に一人で傷つき続け、それによって幻海師範を50年もの間、傷つけ続けたんだから。
本当にもう……馬鹿だったよねえ。
あっ、書き忘れちやったけど、幻海師範が生き返りましたね。絶対に生き返れないと思っていたので、とっても驚きました。
だけどね、幽助ってば力がついても技のほうがさっぱりで……これからどうするんだろうと思っていたんです。
そうだね。幻海師範に教えてもらえるんだね。よかったね、幽助。

残る気がかり

暗黒武術会編は終わったけれど、残された謎や気がかりもたくさんある。
飛影ちゃんと雪菜ちゃんの問題。
左京さんの遺産と、今回分の武術会の収益金の行方(いったい、誰が握っているんでしょう)。
そして、「島に残った左京の野望を継ぐ者」の正体(私はしぶとく生き残っていた戸愚呂(兄)だったりしないかなあと思ってます)。
だけどまあ……とにかく一段落ついてよかった。