『幽遊白書』 「仙水の遺言!!」の巻 感想

今週の心の叫び
死んだんですね……

不親切なあらすじ

仙水は悪性の病巣におかされ、後半年の命と、神谷医師に宣告されていた。
幽助に倒された仙水は、自分の真の望みは、魔界の扉を開けることではなく、魔界で死ぬことだったと語り、絶命する。
そしてそのまま樹は仙水の亡骸と共に、亜空間へと消えてしまった。
一方、幽助は自分を操り、仙水との勝負に横やりを入れた、自分の先祖であるS級妖怪を探し出し、対決しようと考える。

とりあえず現実逃避

今回、表紙がめちゃめちゃ可愛いですね~。
いや~、肉にガブリとかみついている飛影ちゃんが信じられないくらい可愛い!(というよりも、今週は飛影ちゃんの扱いがとことん悪いので、扉絵を見て心慰めているといった方が正解かもしれない)
後ろでなかよししてる妖狐さまと桑原くんも超かわいいなあ。ああ、久しぶりにかわいい表紙が見られて、私はうれしいです。
この4人は、どんな場所でもたくましく生きてっちゃうんだろうね。そうよ、4人一緒なら、どんなところでも楽しく生きていけるわ。そうに違いないわ(それにしても、やっぱり桑原くんだけが先に老いるのかと思うと、哀しくてしかたがない)。
だけど、月人くんは生き返ることができたんですね。本当によかったです(さすがに反省しているようで、神妙な表情してますね)。
コエンマさまってば、仙水の尻ぬぐいをしながら歩いてたのね(笑)。けれど、仙水はそれを計算に入れていたそうですから、コエンマさまも信頼されているというか、なんというか……。
月人くんが生き返ったんだから、刃霧くんも……と言いたいところですけど、魂が抜けちゃっただけの月人くんと違って、刃霧くんは心臓を一突きですからね~。やっぱり難しいんじゃないかと思います(巻原にいたってはアレだもんね~。絶対に無理だと思うわ(笑))。
そういえば、ただの器と知っていても、ぼたんのからだに上着をかけてあげる海藤くんと柳沢くんは、なかなかの紳士だと思いませんか?(幻海師範がやらせたのかもしれないけど)。
だけどだけど……やっぱり、長髪の幽助にはなじめないの~。いくら前髪おろした幽助か好きな私でも、あれは好きじゃな~い!
できれば蔵馬に幽助の髪を切ってもらいたいな。うん、なかなか楽しいシチュエーションだわ。
あと、目をさました飛影ちゃんが、「なんだその髪は、うっとうしいぞ」とか言って、幽助の髪をひっこぬこうとしてね、「わーっ、やめろ。痛ぇだろうが」「なんだ、これは本物か」「あったりめえだろ! 誰が好き好んでこんなかつらかぶるっていうんだよ!」「なんで、こんなに髪が伸びたんだ?」「そんなこと、おれの方が聞きてぇよ!」とかいう、うっとり~なシチュエーションもいいな~(どこまでもストーリーを幽助×飛影にさせようとするけなげな私(苦笑))。

仙水の死

で、一応、ほのぼのとしたことを考えて、現実逃避をはかったわけなんですが……やはり、本題に入らざるを得ませんね。
ええ、仙水は死にました。
これはもう、とんでもないフェイントだと思います。
3ケ月(ぐらいやってたと思う)もかけてあんなに派手に戦って、幽助を殺して、桑原くんを泣かせて、蔵馬を哀しませて、飛影ちゃんを苦しめて、コエンマさまを追い詰めて、あちこちに迷惑をかけて……その結末が、これですか?
もう、仙水ってば、人の迷惑かえりみず、なんてことしてくれんのよ~!
ああ、魔界で死にたいなんていう、たった1人の人間のわがままが、人間界を危機に陥れ、魔界に騒乱のネタを植え付け、霊界までをも動かしただなんて……考えるだに情けない。
そんなところまで追い詰められてしまった仙水は、そりゃかわいそうな人だと思う。そうせずにはいられないほど深い傷を負ってしまったことについては、ものすごく気の毒だと思う。
だけどね、そんな私情に巻き込まれ、ひどいめにあわされた連中の方が、よっぽど気の毒だと私は思うの。
非難を承知で言いますけど、仙水はどこかでひっそりと死んじゃえばよかったのよ(むちゃくちゃ乱暴な意見だな……)。
1人がさびしいのなら、樹さんを連れていけばよかった。樹さんなら連れていってもいい。樹さんはそれを承知するだろうから。
で、百歩ゆずって、コエンマさまになら迷惑をかけても許せると思う。コエンマさま自身が、仙水の罪は自分の罪でもあると信じこんでいるから(けれど、コエンマさまも全知全能ではあり得ないのだから、コエンマさまにミスはあっても罪はない、と私は思っている)。
だけどね、幽助たちが何をしたっていうの?
たかだか同じ霊界探偵という仕事を請け負っていたというだけの、なんの面識もない子を、あんなに苦しめる権利が、仙水のどこにあるっていうの?
権利だとか常識だなんて、仙水も樹さんも気にもとめなかったに違いないけど、私はこだわっちゃうわ。
だって、絶対に仙水よりも幽助の方が、私にとっては大事なんですもの!!!!!
ああ、幽助たちってば、飛び降り自殺した人の下敷になって死んでしまった人と同じくらいかわいそうよ。
どこまでも振り回されたあげくに、なんの謝罪の言葉もなく、なんの責任もとってもらえずに、仙水に死なれてしまっただなんて……。
幽助ならずとも、とっとと生き返って、この始末つけてくれよ! と言いたくなるわ(飛影ちゃんが目覚めて、仙水が死んだと知ったら何と言うか……)。
そんなわけで今の私は、仙水に対して怒るだけで、その死を哀しむ気になれません。
そんなこと言わずに、仙水の死を悼んであげなさい、という方もいらっしゃるでしょうが、私はやっぱり、幽助を殺し、飛影ちゃんを泣かせた仙水が許せないのよ~(桑原くんを殺し、幽助を泣かせた戸愚呂は許せるのに、幽助を殺し、飛影ちゃんを泣かせた仙水は許せないあたり……)。
そうよ! 誰がなんと言おうと、私は仙水の選択を認められないわ!!(今、私は幽助が殺された時なみに怒ってるんです)

仙水の望み

とまあ……ひとしきり、仙水のことを怒った後でなんなんですが、仙水のことを冷静になって考えてみたいと思います。
仙水の死を“自殺”と評した後で言うのも変ですが、実のところ私は、仙水は人類全員との“心中”を狙っているんだと、ずっと思っていました。
で、今週の幽遊を読んで、仙水が狙っていたのは、実は“尊厳死”だったのかもしれないと思いました。
仙水は自分の死に場所を自分で選び、そこにたどり着くために大変な努力をし(それが負の方向への努力であろうとも、その執念にだけは敬意を表したい)、結局は望みをかなえることができたわけですからね。
生まれた場所を間違えた、と思っていたらしい仙水は、死ぬ時ぐらいは自分が選んだ場所で死にたかったのかもしれない。
生まれてから何一つ、自分の望みはかなわなかった、と思っていたらしい仙水は、死ぬ前に一つぐらいは、みずからの望みをかなえたかったのかもしれない。
すると、幽助にふっとばされた時の、仙水の二ッという笑みは、“おれの思い通りの結末になったぜ”という満足の笑みだったのだろうか。
魔界に来ることができた。幽劾のおかげで初めて楽しく闘うことができた。そして、その魔界で“病気”に殺されるのではなく、“闘い”の中で死んでいける……それは、すべて仙水が書いた理想のシナリオに沿ったストーリー展開だったのかもしれない。
やはり仙水は、この“魔界の扉攻防編”の“ゲームメーカー”であった、と私は思うのだ。
シナリオを書き、コマを配置し、派手な演出を加え、劇的な自分の思い通りのエンディングを飾る……それだけの仕事を仙水は1人で成し遂げた(樹さんさえもそのシナリオづくりには参加できなかったに違いない)。
それは仙水自身の命をもコマとし、人間界、魔界、霊界の3界を舞台とする壮大なゲームだった。
勇者とその仲間は、いくつものトラップやダンジョンを突破し、敵を討ち倒し、死と絶望を乗り越えて、ゲーム世界の“神”である“ゲームメーカー”をも殺してしまう。
そして、今、“ゲーム”は終わり、その演出に利用されたコマもアイテムも使い捨てにされたのだ(ところで“黒の章”はどこに消えたの?)。
仙水にとって、しがみついてでも守りたいものはなんだったんだろう。命と引き替えにしてでも失いたくないものはなんだったんだろう。
仙水の愛情はどこに注ぎこまれていたんだろう。
人生を自分の望む形で終わらせたことにより、仙水は幸せになることができたのだろうか。
自分自身の人生を、意に染まない方向に進められてしまった仙水は、自分がつくりだした“ゲーム”の中で右往左往する連中をみつめながら、他人を自分の意のままに動かす快感に身を浸していたのだろうか。
仙水は何も語らずに死んでしまったので、私はたくさんの疑問に、頭をかかえこんでしまう。
仙水はどこまでもわがままで、強大な力を持っただけの子供で、幸福になるための努力のしかたを知らない馬鹿で、そのくせ樹さんやコエンマさまを魅きつけてしまうほどの、純粋で美しい瞳を持つ者だった。
誰が諸悪の根源かと問われれば、仙水であると私は断言する(多分、樹さんじゃない)。
仙水にとって、人間界は生きるに厳しい世界であったけれど、人間界が仙水を中心にまわっていない以上、それは誰にもどうすることもできない。
そんな境遇に追い込まれてしまった彼に、不運だったね、と同情してあげることもできるけれど、そんな自分を傷つけるばかりの世界が気にくわないからと、自分を中心にまわしてしまおうだなんて暴挙は、やっぱり私は許せない。
飛影ちゃんはきっと、幽助があのまま生き返らなかったら、世界で一番、不幸なやつになっていた。それは蔵馬も桑原くんも同じこと。
自分が不幸だからといって、まわりまで不幸に巻き込むなよ! だったら、自分も幸福になってやる、とか考えろよ!
ああ、なんてうっとうしいやつ。仙水の馬鹿ヤロ~!(結局、最初の幽助たちが気の毒、に話が戻ってしまった)。
人間嫌いになってしまった仙水は、人間である自分までをも嫌悪してしまった。
妖怪に転生した戸愚呂が、人間であった自分に未練を残していたのとは正反対に、人間であり続けなければいけなかった仙水は、妖怪になることができれば、もっとマシな生き方ができたのに、と思い込んでしまったのかもしれない。
すべてをきっちりと色分けしなければ気がすまなかった潔癖性の仙水は、“善”と“悪”が混在して、見分けすらつかない人間界よりも、純粋に“悪”のみで成り立っている魔界の方が、よっぽどすっきりしてて気持ちいいと思ったのかもしれない。
世界は仙水にやさしくなかったけれど、世界にやさしくしてあげれば、いつか世界もやさしくしてくれると、私は信じたいんだけどなぁ。

樹さんの望み

で、仙水が人類全体との“心中”を狙っていると思っていたと先に書いたんですが、樹さんは仙水との“心中”を狙っていたんだけれど、まあ、それが仙水の望みなら、仙水に1億や2億の人間という“付録”がついてきてもかまわないだろう、と考えていると思っていました。
結局、私の中の樹さんは、仙水のことしか考えられない、どこまでも仙水に一途なやつだったんですね。
しかし、仙水と樹さんは心の底では両想い(大笑)だと思っていた私ですが、今週の展開を見て、もしかしたら樹さんの片想いだったのかもしれないと、考えをあらためてしまいました。
だって、樹さんにとっては、仙水だけが必要なもので、仙水だけが欲しかったのに、仙水は樹さんさえいればそれで満足なんてことは絶対になくて、何か他のものを欲しがっていたみたいなんですもの。
自分も仙水のコマの1つである、と言い切っていた樹さんは、本当に“ただのコマ”という位置に満足していたのかしら?
けれど、仙水の寿命が残り少なくて、その最後をみとるという仕事を請け負っていた樹さんは、最終的に仙水を乎に入れるのは自分だという確信があったから、その途中経過がどうであってもかまわないと思っていたのかもしれない。
仙水の亡骸にコエンマさまが近づくことさえ許さなかった樹さんは、最後の最後に仙水の完全な所有権を主張したようにも見えます(独占欲だね~。コエンマさまに対抗意識、燃やしてどうしようっていうのよ)。
樹さんはこれから、自分の“テリトリー”である亜空間で、仙水をみつめながら長い長い時間を過ごすんでしょうか?
仙水は死んだのではなく、ようやく于に入れることができた安らかな時間の中で、眠っているだけなんでしょうか?
休むことさえ許されなかった仙水の魂は、樹さんがつくりあげた2人きりの世界の中で、幸福な夢を見ているのでしょうか?
それにしても、この“魔界の扉攻防編”(次回からは“魔界放浪編”にでもなるのか?)で、幸せになれたのは、おそらくは樹さんだけですね。
いや、樹さんは絶対に幸せですよ。仙水を永久に独り占めですからね(最後まであやしいやつだったわ)。

幽助の決断

幽助ってば、見知らぬご先祖様にからだを乗っ取られるわ、仙水に勝ち逃げされるわ、髪は抜けないわ(潮は抜けるのになあ(笑))、全身の紋様は消えないわで、ふんだり蹴ったりですわね。
こうなったら、唯一の怒りのぶつけ場所であるご先祖様を探し出して、喧嘩をふっかけるしかないってのはわかるけど……できれば、魔界には留まって欲しくないなぁ(だって、温子さんや蛍子ちゃんがかわいそうだよ)。
飛影ちゃんは元から魔界に戻りたがっていたから、まあいいとしても、蔵馬と桑原くんはどうするんでしょうね。
幽助と行動を共にしたいだろうけど、志保利母さんや静流姉さんや桐島くんたちを見捨てるわけにもいかないと思うんだけど……。
そういえば、コエンマさまはどうするのかしら?
もしかして、本気で任務や立場や閻魔大王さまを捨てて、幽助についていくつもりかしら……。
う~ん。コエンマさまはあんまり強くないようだから、魔界で生き残れるのかがとっても心配(幽助が責任もって守ってくれるのかなぁ)。
それにしても、幽助のご先祖さまってどういうお方なのかしら……とんでもないブ男だったりしたら、私、泣きますよ(幽助にそっくりだったりしたらコワイ)。
樹さんは「別の敵をみつけ、戦い続けるがいい」なんて捨て台詞を残して消えてしまったけれど、幽助たちだってね、別に好きでこんな苦しいことやってるわけじゃないと思うのよ。
そりゃ、喧嘩は好きだけれど、命の奪いあいなんて絶対に好きじゃないと思うのよ。
ああ、これから幽助はどうなっちゃうの?
幽助~! 私は貴方がどこまでもつっばしっていって、飛影ちゃんや蔵馬や桑原くんを(そして私たち幽遊ファンを)見捨てて、どこかとんでもないところにいっちゃうんじゃないかと、不安でしょうがないのよ~(やっぱり、こんな事態を呼び起こした仙水が許せないですう)。