『幽遊白書』 「コエンマの本気!!」の巻 感想

今週の心の叫び
幽助が好き!!

不親切なあらすじ

幽助と仙水の対決に割って入ったコエンマは、破られた結界を封じ直すために、みずからの霊気を凝縮した“魔封環”(あのおしゃぶりだ!)を使うという。
コエンマは計画の中止を仙水に求めたが、仙水はその要求を退け、コエンマを殺そうとする。
だが、それで納得できないのは、幽助。
コエンマから魔封環を取り上げ、仙水との闘いを再開させようとする。そして、とうとう仙水の主人格“忍”が、表に現れた。

おしゃぶりの秘密

あのおしゃぶりって、霊気を凝縮して封じ込める道具だったんですねぇ。
霊界人たちは霊気を操るみたいだけど(ぼたんは霊気が使えるものね)、コエンマさまは確か、暗黒武術会の決勝戦で鴉さんに「ほとんど霊気が感じられない」とか言われてたんだよね。
だから、霊界人てのはもともと霊気が弱いのか、それともコエンマさまが巧妙に霊気を隠しているのか、と思ってたんだけど、実はコエンマさまの霊気は全部、あのおしゃぶりが吸いとってたんですね。
う~ん。なんだかよく考えるとこわい話だよねぇ。
だってね、コエンマさまが犠牲にならなければ、あの魔封環が使えないとすると、コエンマさまって、いつか魔界を封じるために死ななきゃいけないんだよ。
閻魔大王さまに許可をもらったって……それって、“暗黒期が訪れる前に死ぬ”許可をもらったってことなわけ? じゃあ、閻魔大王さまはそれを承知でコエンマさまの行動の自由を認めたってことなの?
コワイよ。それはコワイよ。
いけにえになるために生きてるようなもんじゃないか、コエンマさま。
それこそ、仙水さんに負けないくらい、人間たちのために苦労してきて、哀しい目にもあってきて、そして、いつか人間たちのために死んでいくなんて……(人間のためだけでもないだろうが)。

墓掘り7人組の正体

知らなかった……言われるまで、まったく考えもしなかった……。
「オレたち7人で墓を掘る」
結局、仙水さんは誰も必要とはしていなかったのだろうか。樹さんさえものけ者にして、自分の中の自分だけを味方として、生きてきたのだろうか。
それはなんだか……“孤独”という言葉も追い付かないぐらい“孤独”な気がする。
にしても、女性の人格までいたとは……そいでもって、内気で純情で、泣きながら樹さんに悩みを打ち明ける仙水さんなんて……考えたら、真っ白になっちゃったよぉ(健全な青少年の頭がおかしくなっても不思議じやないくらい、不健全な話だ)。
それでも、泣き虫役の“ナル”は、樹さんの前にしか現れなかったんだね。
他の6人の人格のストレスを解消するために存在したであろう“ナル”が頼るのは、樹さんだけなんだよね
それだからこそ、樹さんは“忍”の次に“ナル”が好きなんだと思うの。仙水さんは自分を手放さないという確信を、“ナル”は与えてくれるはずだから(仙水さんてどこまでも樹さんに依存してるんだなぁ……)。

コエンマさまの本気

コエンマさまは多分、仙水さんが計画の続行を選択するという確信を持っていた。
それでも、あえて仙水さんにわずかな望みを托し、計画の中止を迫ったのだ。
コエンマさまはまだ、仙水さんへの信頼を捨てきれない……というか、仙水さんの変化を信じたくないという気持ちを捨てきれない。
コエンマさまの心の中で生きていたのは、綺麗な瞳を持つ、高校生の仙水さんだった。仙水さんは確かに、コエンマさまを魅きつけ、樹さんを魅きつける、魅力的な人物だった。
そして、コエンマさまはそんな過去の仙水さんを忘れ去ることができない。だからこそ、その澄んだ綺麗な瞳に、醜い光景ばかりを映し出させることになってしまった自分の決断を、悔やまずにはいられない。
「共に地獄におちよう」
コエンマさまはなんと、仙水さんと心中する覚悟であったのだ。
コエンマさまは仙水さんを救うことを望み、仙水さんは救われることを拒んだ。
そんな状態で、コエンマさまにできることといえば、仙水さんの罪を、仙水さんと自分の命で精算することぐらいなものだ。
なんだかめっきりと老け込んでしまったコエンマさまの、あのあきらめきったような表情がとっても哀しい。

幽助はやっぱり幽助

コエンマさまから魔封環を奪った幽助の、目のすわりかたがすごかった。
いや、おしゃぶりくわえてる幽助って、めちゃくちゃ可愛いじゃないか(あれは間接××だなんて……そんな恥ずかしいこと……言えないわ(笑))。
あの時のコエンマさまは、苦労して組み上げたジグゾーパズルの、最後の1ピースをはめこもうとした瞬間に、そのピースを奪い取られ、そのうえジグゾーパズル全体をグチャグチャに踏み散らされたような気分だっただろうなぁ。
ああ、そのうえコエンマさまときたら、幽助に殴られて気絶してるし~(コエンマさま、うでっぷしは弱かったのね)。
さっきまでのシリアスはどこへ行ったんや、という気分でございましたが、とにかくうれしかったの……。
コエンマさまが死ななくって、本当によかった。
仙水さんが救われる機会が失われなくて、本当によかった(心中なんかしたって、コエンマさまも仙水さんも、本当の意味では救われない)。
幽助か幽助で、本当によかった。
ああ、幽助が久しぶりに、本当の幽助になってるなぁ(蔵馬の「きれたというよりも……」と言ってる時の顔がすっごく可愛い!)。幽助が本気で怒ってるなぁ。
戸愚呂と闘ってる時の幽助は、ひどく哀しそうだった。神谷医師と闘ってる時の幽助は、ひどくいらいらしていた。
だけど、今週の幽助は違う。
ただ、本気で怒っているだけなのだ。
怒りに理由はいらない。とにかく、幽助は仙水さんが気に入らないだけなのだ。
穴を開けられた腕で、おもいっきし仙水さんを殴っちゃうあたりが幽助。
まわりの迷惑なんかちっとも考えないあたりが幽助。
なにがなんでも、キッチリとケリをつけなきゃ気がすまないあたりが幽助。
うお~! こんなに幽助らしい幽助は、いつ以来だ?
最近、こればっかり言ってるような気がするが、私はやっぱり幽助が大好きだ。
冨樫先生はやっぱりすごい。私が忘れかけていた、本当の幽助の姿を、きちんと私に見せてくれた(冨樫先生が私だけを対象に幽遊を描いているわけではないが、ついそう思ってしまうのが、ファン心理というものだ)。
私はこんな幽助に会いたかった。
だから、私は本当にうれしい!
幽助はちゃんと、怒りを正当な方向にぶつけている。これはきっと、正しいことだ。仙水さんはおそらく、怒りをぶつける方向を間違えてしまっているのだから。
そうだよ、どうにもならないことで、うだうだと悩んでる不健康な大人たちなんかに、健康的な中学生が振り回されることはないんだよ(幽助の考え方は実に前向きで健康的だと思いません?)。
大人たちが勝手をやるのなら、子供だって自分の勝手を主張してもかまわないんだよ。
ある意味、コエンマさまは幽助をないがしろにしていた。自分のつらい立場と仙水さんへの愛情に目がくらんで、自分が選んだ幽助という霊界探偵が、どういう少年なのかということを忘れていたのだ(自分で言ったでしょうが! 幽助はなにも考えずに行動する、頭より先に体が動くバカなんだって)。
幽助には幽助にしかできないことがあるから、それだけをやっていればいいのだ。
仙水さんを救うべきは仙水さん自身だから、幽助が仙水さんを救ってやる義務などはとこにもないのだ(だけど、コエンマさまはそこまで開き直ることができないんだよね)。
行け行け幽助! そんな幽助の行動を、きっと桑原くんも蔵馬も飛影ちゃんも喜んでいるぞ(この3人て、幽助の崩壊と世界の崩壊のどちらかを選べって言われたら、世界の崩壊を選んでしまいそうな気がする(笑))。
それにしても、ようやく現れた仙水さんの主人格である“忍”は、ずいぶんと落ち着いた、澄んだ瞳をしている。これが、樹さんが一番、好きな仙水さんなんだなぁ……とか思ったら、なんだか泣けてきてしまった。