『ワールドトリガー』第162話 「玉狛支部・5」(戦争と戦争ごっこ)

玉狛支部の「城戸」のプレートがかかる部屋でオサムがみつけた1枚の写真。
玉狛支部をバックに写る19人。
このうち10名が5年ほど前の戦いで亡くなったとは、壮絶すぎるな。

生き残った9人の現状は以下の通りか。
・城戸さん⇒司令
・忍田さん⇒本部長
・林藤さん⇒玉狛支部長
・桐山さん⇒本部勤め(どんな仕事をしているのか不明)
・ゆりさん、レイジさん、迅さん、小南ちゃん⇒玉狛支部で隊員を続けてる
・真都さん⇒一般人
桐山さんと、真都さんは未登場なんだけど、これから出てくるのかな。桐山さんの方は登場する可能性高そうだけど。

林藤支部長にべったり張り付いて笑ってる小南ちゃんがかわええんだけど、これが6年ほど前で、5年くらい前に仲間の半数が失われるという大惨事があり、4年半くらい前の第一次大規模侵攻時の小南ちゃんとおぼしき女の子が無表情というのは、察するにあまりあるものがある。
そう考えると、よく、今の表情豊かな小南ちゃんに戻れたものだよなあ。
小南ちゃんのいとこである嵐山さんが、家族を守ること、町を守ることに、強い意志を持っているのは、小南ちゃんの変化をみているからなのかもな、とか思ってみたり。

レイジさんはゆりさんに視線をやって頬を染めてるけど、この頃からすでに片想いか……長すぎだろ。
狙撃手には忍耐が必要だけど、忍びすぎだろ。いや、全然、忍べてないけどさ。

林藤さんが頭をなでてるのは風間さんのお兄さんかね。
林藤さんの弟子だったそうだし、なんとなく風間さんに似てるし。でも、お兄さん、背が高い(苦笑)。

旧ボーダーもやっぱり平均年齢が低かったようで、半分以上はまだ10代の子供にみえるんだが、こんな子供たちを戦争に巻き込んで死なせてしまった城戸司令の心中を考えると、そりゃあ、別人にもなるわな、という感じ。
よく、このマンガに対して「戦争ごっこしているだけ」という批判をみかけるが、城戸さんたちは子供たちに戦争をさせないために、今のボーダーをつくりあげたのかな、とも思える。
ネイバーが出る限り、戦いは不可避。そして、主戦力は子供たち。
だからこそ、子供たちに「戦争」をしているという意識を持たせないよう、「戦争ごっこ」ですませられるよう、なおかつ、自分たちは正義だという誇りを持てるよう、城戸さんたちは今の仕組みをつくったのかもしれない。
本当の「戦争」を知ってしまった子供たちを玉狛に残して。

城戸司令が、やたらと三輪をそばに置いてるのは、憎しみを忘れられずに苦しむ三輪の姿に、共感しているからなのか?
いや、むしろ、三輪をみることで、自分の憎しみの火に薪をくべてるのかもしれんとか、めっちゃ暗い想像してしまった。
三輪としては、城戸司令の近くが安心できる、というのはあるかもしれん。
城戸司令は決して「復讐なんてむなしいことはやめろ」「憎しみは何もうまない」とは言わないだろうから。

城戸司令は仲間を失った時に「空閑がいてくれたら」と思ったかもしれない。
それが、ユーマへの微妙な態度に出ちゃってるのかもしれない。
有吾さんが今の城戸さんをみたら何を思うのだろうなあ。

「三輪しか戦争してねーじゃねえか」という感想をどこかでみたことがあるんだけど、個人的には、風間さんも戦争してる感があって、それは兄が「戦死」しているからなんじゃないかな、と思っている。
でも、風間さんと三輪で決定的に違うのは、風間さんは「兄は自分の意志で戦って死んだ」と思えるけれど、三輪のお姉さんはただ災厄に巻き込まれて亡くなったわけで、これは遺族としてはだいぶ気の持ちようが違うんじゃないかな。
だけど、それを考えると、ただ災厄に巻き込まれて亡くなった母と、自分の意志で戦って亡くなった師匠を持つ迅さん、どんだけヘヴィーだよ! ってなるんだよねえ。
母親の死も、5年前の大惨事のことも予知していたのかなあ、とか思うとさらに。
迅さん、世界中の不幸を背負ってます、みたいな顔してても納得するくらいの人生だよなあ。
それなのに、ああいう軽いノリの言動をしてるから、めっちゃ胸が痛い。でも、セクハラはダメです。

それにしても、昔の城戸司令の笑顔がせつない。
こういう人の元なら、忍田さんもやんちゃ小僧でいられたんだろうと思う。
今の太刀川さんみたいに。
でも、城戸司令が変わって、忍田さんもやんちゃ小僧ではいられなくなったんだろうなあ。

「何人かは黒トリガーになった」という言い回しは、ボーダーに「風刃」と天羽くんが持っている黒トリガー以外にも黒トリガーが存在している可能性をうかがわせる。
戦争のどさくさで他の国にとられた可能性もあるけど。
もしかしたら、城戸司令しか起動できない黒トリガーが秘蔵されてるかも、とか妄想してみたり。

城戸司令のやり方は、ボーダーの最初の理念からは外れているかもしれないけれど、三門市を守ることには成功している。
でも、それがいつまでも成功するとは限らない。
力で屈服させれば、力で押し返されるのは当然だから。
今のところ、表立っては三門市防衛に徹しているからこそ、支持してくれる市民たちも、逆に近界に攻め込むとか言い出せば、難色を示す層は出てくるだろう。
さらわれた人たちを取り戻す、という大義名分でもない限りは。
案外、オサムのあの記者会見は、城戸司令にとって好都合だったのかもしれんなあ。
迅さんのいう「真の目的」を果たすためのステップとして。
だとすると、迅さんはあえて、城戸派を止めずにオサムをあの記者会見に出させたのかもしれない、とかいうところまで考えちゃって、うわぁ、ってなってる。

林藤さんは「戦争」で生き残った子供たちと一緒に、旧本部に立てこもってる形か。
ゆりさんと同じく、城戸司令のやることすべてに反対というわけではないだろうが、城戸司令のやり方だけだと破たんするとは思っているかもしれない。
だからこそ、あえて反逆者の立ち位置をとってるのかな、とか思う。
もちろん、旧ボーダーの理念を守りたい、という気持ちはあるだろうけど、ボーダーが自滅するリスクを減らすために、サブルートを確保しているってのもあるんじゃないかな。

想像以上に重いボーダーの過去に対して、現在のボーダーは非常に和やかだ。
ユーマの「グラスホッパー殺法!」が妙にかわいいし。

ヒュースに遊んでもらって(?)ユーマが上機嫌だったり、そんなユーマをみてチカちゃんがうれしそうだったり、カゲさんはうちに招待するほどユーマと仲良しさんになってたり、うぉ~、なんだよ、この楽しそうな世界は。
あと、「何時でも連絡よこせば迎えに行くぞ」とかレイジさんはめっちゃ面倒見がいいよなあ。

次のランク戦でぶつかる相手だとわかっていても、普通に個人ランク戦やってるユーマとカゲさんと鋼さん。
ランク戦はただの練習試合だから、そんなにピリピリするようなことでもないんだろうなあ。
まあ、遠征がかかってる三雲隊だけは、いろいろと必死だけど。

ところで、アフトクラトルの戦士だったヒュースはあんまり16歳な感じがなかったけど、ユーマに負けて露骨に不機嫌になってるところをみると、16歳って感じがするね。
アフトクラトルにはこんな気安い態度をとれる相手がいなかったのかもなあ。

オサムが知った、ボーダーの悲劇的な過去と、現在の玉狛支部の立ち位置。
これが、これからのオサムの行動にどんな影響を与えるんだろう。
とか思ったんだけど、ユーマを守るという意志はまったく揺らがないだろうし、なんも変わらないんだろうなあ。
だけど、これからの城戸派との交渉には関わってくるかも。