『逃げ上手の若君』(第213話 一心同体1352) 感想

「尊氏にも人間の心は残っています」
雫からそう言ってもらえてたのは、直義にとって救いだったんだろう。
「中の神」に支配されていても、それに懸命に抗おうとして震える拳。
それをみて、兄に愛されていることを確信してから逝けたのだから。

「最後が私で良かった」と思いながらの最期だったのだから。


でも、尊氏にとってはここからが絶望のはじまりなんだよね。
「中の神」のやらかしがすべて自分にかえってきた。
しかも、本当に愛した者、愛してくれた者をすべてみずからが葬った後で。

心の底から陶酔していた後醍醐天皇。
尊敬していた新田義貞、護良親王、楠木正成。
ずっとそばにいてくれて、かいがいしく世話をしてくれた高師直。
そして、一心同体の弟。
みんないなくなってしまった。
自分が殺した。

もはや残っているのは、自分をうまいこと利用しようと画策する者と、自分に怯える者ばかり。


人間としての尊氏の悲しみと怒りの感情は吹き上がるけれど、すべて自分が原因なのでぶつけ先がない。
そのタイミングで耳に飛び込んできた時行の名。
尊氏は簡単に操作されてしまった。

尊氏を動揺させることが肝だったね、そういえば。
なるほど……直義の死をこういう形で利用するのか。


ようやく弓や刀で殺せそうな感じになってきた尊氏。
物語の終わりが着々と近づいている。