『ワールドトリガー』第142話 「柿崎国治」 感想

オサムひとりに足止めくらってる感じになっちゃってる香取隊。
まあ、チカちゃんの鉛弾狙撃が協力してるので、ひとりきりというわけではないんだけど。
いや、弱い駒が強い駒を足止めできたらそれで十分に戦果だねえ、確かに。

15歳の嵐山さんがかわええって、思ったんだけど、途中からなんだか恐くなってきた件。
嵐山さんの願いは「家族を守りたい」で、次に「友達や仲間を守りたい」で、それを拡大した結果、「家族や友達や仲間が暮らす三門市を守りたい」になったんだろうね。
だから、市民の安全が第一な忍田派の筆頭みたいになっちゃったのも、自然な流れなんだろう。

嵐山さんが広報に向いていると思うのは、まず「正解」を探そうとしないところなんじゃないかと思う。
普通だったら、柿崎さんみたいに無難な「正解」を探そうとして、迷って、そこを突かれてしまう。
でも、嵐山さんは「正解」を求めず、真っ正直に思ったままのことを言ってしまう。そしてそれが「正解」になってしまう。
あそこで嵐山さんを責めたりしたら、15歳の子供が家族のために命がけで戦おうとしているのにそれを責め立ててる、っていうめちゃくちゃ悪役っぽい印象になるから、これはもう黙るしかなくなるでしょ。

嵐山さん本人は嘘や美辞麗句を並び立ててるつもりはまったくなくて、ただひたすらに正直なだけで、だから広報といういかにも大変そうな任務が苦にならない。
自分ががんばることで、ボーダーの仲間が増えたり、理解者が増えたり、スポンサーが増えたら、それはとってもうれしいことだ、とそりゃもう純粋に思っていそうだ。
そういう正直さは伝わるものだから、つくりものじゃない言葉と笑顔に、人は共感をおぼえる。
本当に、嵐山さん以上に広報に向いてる人っていないよね。
これは、根付さんが目を付けるのも当然だわ。

嵐山さんが三輪に迅さんの母親の話をした時、この人なんでこんな余計なこと言うかな、と正直、思った。
だって、それって三輪に言ったって、三輪が苦しむだけだし、迅さんが話さなかったとこを嵐山さんが言っちゃうのはどうかな、と思ったんだよね。
でも、嵐山さんはただ正直なだけだったんだな、と今になってそう思う。
自分の考えを正直に口にしてるだけで、そこには善意も悪意もなく、ただひたすらに「正しい」。
そして、その「正しさ」に三輪は傷ついた。
三輪だって、自分が迅さんに対してやってることは、ただのやつあたりだという自覚はあるだろう。そこは「自分の命を助けてくれてありがとう」というのが正しくて、緑川のごとくに迅さんを崇め奉ることができれば、三輪はどんだけ楽になれるだろう。
でも、三輪は正しくあれない。それほどに傷ついている。
その弱さを迅さんは許容してるから三輪を責めないし、どちらかというと、その弱さを慈しんでいるようにもみえる。
そして、きれいごとを素で実行できる嵐山さんは、「正しさ」を三輪に突きつけるだけで、三輪の弱さを罰するようなことはしない。
迅さんを許さなければいけない、と三輪にせまったりしない。
嵐山さん本人は正しさなんか求めていないし、自分が正しいとも思っていないから。
嵐山さんは正しくあろうとしているわけでなく、自分の気持ちに正直なだけで、その結果がああなっちゃってるだけなのね、と思うと、三輪が本当に苦手に思うべきは、迅さんでも太刀川さんでもなく嵐山さんだろう、と思うわけだ。

それにしても、15歳の子供が「最後まで思いっきり戦えると思います」と笑顔で言うという、この恐ろしさよ。
いやいやいや、嵐山さん、本気で家族のためなら死んでもいいと思ってるよね。
なんか、かなりぶっとんでるぞ。
こういう人だからこそ、迅さんの親友でいられるのかもなあ。
でもって、迅さんと嵐山さんの大きな違いは、迅さんは自分のことを「普通じゃない」という強烈な自覚を持っているのに対して、嵐山さんは自分のことを「普通」と思ってそうなこと。
嵐山さん、自分は家族が大事な普通のお兄ちゃんだと、本気で思ってそうだよ。
そんでもって、トリオン量が普通の人より多いけど、そのおかげで家族を守ることができるんだからラッキー、くらいに思ってそう。
「普通じゃない」って思ってる普通じゃない迅さんと、「普通」だと思ってるけど普通じゃない嵐山さん、て感じ。
迅さんは、普通じゃないのに普通に生きることができる嵐山さんを、うらやましく思っているのかもね。

迅さん、嵐山さん、月見さんという、強烈なタレントぞろいの同級生に囲まれて、本当に「普通」な柿崎さん。
これはツライ。
21歳組における諏訪さんとか、20歳組における堤さんみたいな立ち位置にみえるんだけど、諏訪さんと堤さんはそれなりに同級生の中でポジションが定まっているというか、無駄に張り合おうとしてない感じなのに、柿崎さんには嵐山さんに対するコンプレックスがあるようだ。
あれだけの記者の前で自分を繕うことなく堂々としていた嵐山さんに対して、自分はかっこ悪かった、みたいな思いとか、広報部隊を任せられた嵐山隊から逃げ出した、という思いとか、いろんなものが積もっちゃって、嵐山には叶わない、と痛感しながら、「自分は自分」と思いきることもできない。
これはキツイ。

嵐山隊は広報部隊になった時点ではまだA級ではなかったのかな。服に嵐山隊のエンブレムがついてないし。
で、木虎ちゃんだけが、広報部隊であることを承知で嵐山隊に入ってるのか。
とっきーと佐鳥は、広報の仕事を引き受けることをどう思ったんだろうね。
どんな事態になろうとも、嵐山さんについていくだけです、くらいな感じなんだろうか。

「この人は支えがいがあるそう」って……照屋ちゃんが意外といい性格してた。
これヘタすると、将来、ダメンズウォーカーになりそうな気がしないでもない(苦笑)。

ボーダーには新人王というタイトルがあるのね。
今期だと、間違いなくユーマが獲りそうだが。

照屋ちゃんに狙われるチカちゃん。
チカちゃんがわりと落ち着いている感じなので、なんらかの手段は講じてるんじゃないかな、と思うんだが、さてどうなる。

そして、柿崎さんの捨て身の攻撃をくらったユーマ。
まあ、トリオン体の場合、脇腹をえぐられたくらいじゃ即行動不能になるってことにはならないようなので、このままベイルアウトってことにはならないと思うんだけど、ユーマにしてはもろにくらっちゃったなあ、って感じ。

柿崎さんは柿崎さんなりに必死にあがいている。
でも、ユーマもユーマなりに必死にあがいているんだ。
柿崎さん視点でみれば、ユーマっていうのは自分を踏み台にしようとしている生意気なルーキーにみえて当然だと思えるけど、柿崎さんが自分の部下を大事に思うように、ユーマはオサムとチカちゃんとレプリカを大事に思っているんだよ。

それぞれの立場で、それぞれが大事に思うもののために戦っている。
だから、どっちも応援したい。
ていうか、今回、香取隊が空気状態なんですが……。でも、それ以上にオサムが空気のような気もする。