『呪術廻戦』(第28話 殺してやる) 感想(イカレた子供同士の救いのない壊し合い)

祝! 『ジャンプ』表紙&巻頭カラー!
周年とかのイベントごとがあるわけでもないのにこの扱いとは、人気が出てきてるんだな~、って実感するよね。
最近、掲載位置が『暗殺教室』を思い出させる高さだし。
これでしばらくは打ち切りの心配はないな。良い良い。


というわけで、今号はカラー絵が3枚なんだけど、全部、趣が違ってよいね。

表紙は『ジャンプ』っぽく、主人公がドンとでばってて主要キャラ勢ぞろい。
いかにもバトル系少年マンガって感じ。

で、それを開くと、あの表紙の健全っぽさはなんだったの、って感じのドス黒い虎杖の横顔……。
こわいから……めっちゃこわいから……なんなのこの温度差。

で、さらに開くと巻頭カラー絵は静かに正面を向く虎杖と真人。
周囲に浮いているくらげは吉野くんを暗示してるのかな、と思うとどんよりしてくるな。
この絵もコミックスでモノクロになったら真っ黒になりそう(苦笑)。
しかし、真人と虎杖が静かに並んで座ってるシチュエーションなんて、本編内ではおこりそうにないよね。
そういう意味では超貴重。
吉野くんの中では、虎杖と真人が仲良くなってくれないかな、ってビジョンがあったのかもしれない。

それにしても、巻頭カラー回のサブタイトルが「殺してやる」って、物騒すぎるだろ。
ていうか、ここまでドストレートなサブタイトルなかなかないよ。


やっぱり、虎杖が宿儺を出さざるを得ない状況をつくりあげて、宿儺と交渉させ、そのどさくさにまぎれて自分たちも宿儺と交渉をしよう、という算段だったか。
もう完全に、吉野くん利用されただけ。
たまたま虎杖と同じ年頃の男子が声かけてきたから、こいつなら虎杖に近づけるんじゃね? と思った、ってとこか。
で、それが「大当たり」だったと。

虎杖が一度死んでる件、夏油たちは知ってるんだな。
高専内に密通者がいるのかな、やっぱ。
まあ、虎杖が宿儺の器だって知ってる時点で、そりゃいるだろう、と思ってたけど。


「何百回でも何千回でもグチャグチャになるまで叩き潰す!!」って、その発想が怖いよ、虎杖。
五条先生に「イカレてる」認定受けてる虎杖だけど、本当にバトルスタイルがイカレてる。
トゲみたいのが手にささっても、それを握って引き寄せるし。
「離すだろ、普通に」って真人に言われちゃう点で、かなり異様な判断。

いや、本当に虎杖の戦闘シーンって痛そうだよね。
呪胎戴天の時も、指ボロボロにされてたし。
あの時は痛さと辛さと悔しさで涙をこぼしてたけど、今の虎杖にはあの時の「普通」感がない。
経験値があがってたり、対処法をいろいろと学んだりしてるので、戦闘に対してちょっと冷静なとこがでてきてるのと、吉野くんのことで怒り過ぎていろいろブチギレちゃってるのが混ざって、クールなんだか暴走してんだかちょっと複雑な感じに。

この虎杖、まったく自分の身の安全のことを考えてなくて、本当に痛いしキツい。


真人はバカ強いけど、一番の特殊能力の「無為転変」が虎杖に通じないから、決定打がない感じか。
殺すわけにもいかんしね。


虎杖の魂に触れることは、宿儺の魂に触れることと同じ。
そして、それを許す宿儺ではない。

「共に腹の底から小僧を嗤った仲だ」って、結構ひどいことを言ってるような気がするんだが、かっこいいな、宿儺。
「一度は許す、二度はない」って台詞も、圧倒的に真人を見下してる感があって良い。
まあ、宿儺からみれば真人はよちよち歩きの子供みたいなもんだろうけど。


「代わんねぇよ。言ったよな。ブッ殺してやるって」って言ってる虎杖の目が完全にイカレてる。
こわすぎる。
でも、頭突きで真人の顔グチャグチャになってると思ったら、デコイだったという……。
真人はどんどん器用になっていくな。


で、虎杖と真人の間に、突然、7:3の目盛りだけのコマが割り込んでくるのかっこいい!
これだけで、「あっ、七海さんが間に合った」って思った。
最低限の絵でそれだけの情報がちゃんと伝わるのすごい。


ところで、七海さんをみて、真人がうれしそうか顔してるんだけど、これって、「あっ、餌が自分から飛び込んできた」とか思ってないだろうな。
虎杖の目の前で七海さんを呪霊にしたら、宿儺との交渉のチャンスをつくれる! とか思ってないだろうな。
……ここで七海さんまで犠牲になったら、虎杖のメンタルが死んでしまう……。

七海さんは、真人相手に一対一で勝つのは困難とわかってて、それでもあえて飛び込んできた。
虎杖を見捨てるわけにはいかないから。
でも、七海さんのことだから、何かしら対策は講じていると信じたい。
五条先生を呼んでるとか……だったらいいな……。


体育館で生徒たちが大勢倒れてるし、校舎を壊しまくりだしで、これはもう隠しようのない事件だから、虎杖の隠匿もここが限界ってことになりそうだね。
虎杖をはやく伏黒と野薔薇ちゃんにあわせて、虎杖を手荒く慰めて欲しい。
玉犬だしてもらって、もふもふするといい。
なんならパンダ先輩をもふもふすればよい。


このバトルはイカレた子供同士が壊し合いをやってるって感じで、痛々しさしかない。
うん。「殺し合い」というよりは「壊し合い」って感じなんだ。
真人は一応欲しいものがあって戦ってるけど、虎杖にはこのバトルで得たいものなんかない。
先輩たちを救いたいとか、取り残された人たちを助けたいとか、これまでのバトルにはちゃんと目的があったんだけど、今回も飛び込んだ時は、学校にいる人たちを無事に"帳"から出してあげなきゃ、とか思ってたんだろうし、ついさっきまでは吉野くんをどうにかして元に戻したいとか、いろいろあったのに、今はもういろんなことがふっとんでいる。
真人を倒せばこれ以上、呪霊にされる人をつくらずにすむ、という目的が残ってるはずなんだけど、そこらへん意識にあるのかあやしい感じ。

虎杖は救いたい。
自分に救いを求めてくる人間すべてを。
でも、この場には虎杖が救うべき存在がいない。
吉野くんはもう救えないところに行ってしまった。
だから、虎杖にはこのバトルで得られる救いが何もない。

虎杖は真人という存在を抹消しなければ、自分という存在を許せなくなるほどの絶望の中にいるんだろう。

この「子供」同士の壊し合いに割って入らなきゃいけなかった「大人」は、本当に大変だよね。残業どころのさわぎじゃないよね。
とりあえず、七海さんは無事に生還して、虎杖が泣くほどのガチ説教をして欲しいもんだ。


「巻頭です!!みんないつもありがとー!!アリィイナアー!!二階席ーーーーー!!」
芥見先生の巻末コメントのテンションが高くてなごんだ。
芥見先生が喜んでいるようでなによりです。
これ読んで、「自分がいるのはアリーナなのか、二階席なのか」としょーもないこと考えたんですけど、全員がアリーナ最前列で楽しんでる気分になれるのがマンガのいいところですよね。うん。