『逃げ上手の若君』(第106話 父子1335) 感想

尊氏から後光が差し、その光にふらふらと引き寄せられる武士たち。
そして、吹雪もその中に……。

こわすぎるだろ、これ。
尊氏の表情が本当に人間っぽくないのすごいな。
本人の自我が抜け落ちてる感あるというか。

正気を保ってる人と魂持ってかれちゃってる人の差はなんなんだろうね。
信仰心の問題なのかな。
諏訪大社に対して信仰の篤い人は大丈夫とか?


おなじみ南北朝鬼ごっこの絵がすごい。
なんか『魔人探偵脳噛ネウロ』に出てきそうな。

尊氏の内側に地獄の業火があって、そこに吸い込まれていく人々?

紙版でみたら、左上の「鬼」の字の上になんかごちゃごちゃした字があるけど読めないな、印刷でつぶれちゃったかな、と思って電子版で拡大してみたんだけど、やっぱり読めなかった。
複数の漢字を組み合わせてるっぽいんだけど。
かろうじて「呪」って字は読めた。


この異様な光景を「流石は尊氏殿の御人徳よ」ですませちゃう道誉はなんなの?


捕虜になった吹雪は、吹雪のことを覚えていた高師直によって、死んでしまった猶子の高師冬にすりかえられた。
「猶子」って知らなかっただけど、相続権の無い養子か。
相続権が発生しないのなら、強い方がいいとはなるか。
一応、血のつながりはあるらしいし。

そうか……そうなるか……。

でも、師冬の仮面をかぶるということは、仮面を捨てて時行の元に戻っても問題なしってことになるよね?
そうだよね?
そこに一縷の希望が!

それにしても、頼重は史実的に仕方ないと思ってたけど、吹雪までひきはがされるとはな……。
自分の過去を打ち明けて、清々しい気分になってたあれは何だったの?
読者の絶望を深くするためだったの?(←多分そう)


「北条と諏訪以外の大半の武士が降伏し…」って、足利に対する敵対心が強い連中だけが残った感じだろうか。

頼重は時行を逃がす時間を稼ぐために、勝ち目のない戦いに挑む覚悟。
頼重が穏やかなことが悲しいし、その頼重に静かに従う覚悟の祢津、保科、四宮の姿も悲しい。

もっと悲しいのは、頼重を家族と思っているのに、引き留めるために「都合よく父親面するな!」「主従の分をわきまえろ」と言ってしまった時行。
時行は必死で、どんなものでも使って、頼重を引き留めたかっただけなんだ。
それは頼重にもちゃんと伝わっている。
それでも頼重は「…仰る通り はなから我らは他人でした」と突き放した。
頼重にとってこれは譲ることができないから。


泣く時行を、おしとどめる叔父上のおでこに何の字も浮かんでないのがな……。
常に本心が出る人の本心が、言葉にできない、ということなんだ。
このギャグみたいな設定が、こんなところで泣けるネタになるとはな……。

覚悟していた展開ではあるけどキツイ。