『逃げ上手の若君』(第171話 望郷1338) 感想

後醍醐天皇からよくわからないグルメバトル(?)を挑まれ「外したら死罪」とか言われて困惑する時行。
きっと読者みんな困惑している。

しかしここでさらっと顕家の父・親房が助け舟を出してくれた。
息子の陣営で戦っていた時行を無碍にはできないんだろうな。
ずっと時行に厳しくあたってるけど。

親房の目の下側がちょっと濃く描かれているのは、息子の訃報に泣いたせいかもしれない。
ずっと平静を装っているけど。


親房のアドバイスで正解にたどり着けた時行。
でも、そもそも頼重が教え込んだ教養がなければそこにたどりつけなかった。

最初の頃の時行は勉強する意味がわからなくて逃げたりしてたけれど、それがここで活きてくるとはな……。
頼重はここまで読んでいたのかな。
いずれ公家と接する機会があるだろうから、その時のために、という考えはあったんじゃないかな。


ただの無理難題と思えた後醍醐天皇の要求は、だいぶ遠回しに自分の気持ちを伝え、それを読み取れるだけの教養を時行が持っているかの試験だった。

そして、御簾から出て来た後醍醐天皇。
前に登場した時よりだいぶ老いているようにみえる。

後醍醐天皇は楠木正成を失い、北畠顕家を失い、「朕はもう過ちを繰り返さぬのだ」と言うけれど、もはやそれを繰り返す時間は残っていない。

この人は革命家としては超有能だったんだろうね。
しかしながら、自分が知る限り革命家が為政者として有能だった例はないんだよ。
多分、必要な資質が違うんだろうな。

「めんどい」とか言って放り投げるみたいなことになるくらいなら、北条家とうまいこと交渉しておけばよかったのかな、という気もするんだけど。
傀儡になるのはイヤだ、という気持ちが譲れないのなら無理かな、やっぱ。


「北条時行はどの武将の指図も受けず…遊軍として自由に戦えるものとする」
後醍醐天皇が時行に授けてくれた、官位よりも名よりもありがたいもの。

そうだよね。大軍を率いるよりも、信頼できる少数の味方と共に自由に戦う方が時行には似合うよね。

「うむ 朕はモテモテで万能なのだ」
この台詞のキュートさときたら!
前回までわけわからん存在だった後醍醐天皇が、たった1話で楠木正成や北畠顕家の忠誠を得るにふさわしい魅力的な存在になって、松井せんせーの手腕がすごすぎる。

顕家に無理をさせたのも、自分の寿命の残り時間がみえて焦っていた、と理解できたし。

「故郷へ帰りたい」
時行と後醍醐天皇が共に抱く強い想い。
失って、あがきまくって取り戻して、それなのに再び失ったというところまで同じなんだな。

このふたりをみてると、尊氏ってなんなの~、ってなる。