『スイミング』から『アマリリス』へ ~ゆらがない世界のゆらぐ物語~

『サムライうさぎ』の福島鉄平先生の短編集が出たですよ!
それも2冊同時に!
帯に「6年ぶり最新刊」って書いてあってちょっとびっくりしたんだけど、よく食いつないできたなあ(苦笑)。
私にとっては、松井せんせーと並んで、「マンガ家をやめないでくれてありがとう!」なマンガ家さんなんです。

ということで、ちょっと思ったことをつらつらと。
感想になってないと思うんで、今回、タイトルに「感想」は入れてない。


『週刊少年ジャンプ』に『月・水・金はスイミング』が載った時、「これはすごい。見事なまでに話が動いてない」と思った。
マンガ、ことに少年マンガというものは、「動く」ことがキモだ、と思っている。
「キャラが動き」「状況が動き」「世界が動く」ことがキモなのだ。
でも、『月・水・金はスイミング』では、主人公の男の子は、心の中ではいろいろとゆらぐものがあるが、実際にどうこうすることはない。いつもの日常をいつも通りにしか動かない。
状況も動かない。
もちろん、世界が動くわけがない。
ただ、淡々と物語は進み、静かに終わった。

こういうマンガが『ジャンプ』に載ってるってのがすごい! と思った。
そして、ちゃんとおもしろいのもすごい! と思った。
まあ、これで連載は無理だろうなあ、とも思ったけどね(苦笑)。


それから福島先生はぼちぼち短編を発表して、いきなり青年誌である『ミラクルジャンプ』に短編を描きだした。
いや、あの絵で青年誌ってどうなんの? と思いつつ、普段は買わない『ミラクルジャンプ』を買って『アマリリス』を読んで、ひっくりかえった。

いやいや、私も福島先生がショタホモ漫画を描くことになるとは思いませんでしたよ(笑)。

そして、『アマリリス』もまた動かない話だった。
厳密には、世界が大きく動いてしまった後の動けない話、と言うべきか。
少年は身動きがとれない。
そして、彼を取り巻く厳しい状況も動かない。
残酷な物語を、少年は淡々と受け入れ、話は静かに終わった。

『イーサン飯店の兄弟は今日も仲良し』のイーサン兄弟、『ハルよ来い』のヤマウバ様とカムリ、『私と小百合』のマコトと大介は、いろいろあったけれど、結局は最初の関係に戻る。
ゆらぐけれど、動いてない。
ぐらぐらと動いて、元の場所に戻る。

それぞれが、自分の気持ちがゆらいだ記憶を抱き、迷いなく元に戻る。

世界は岩盤のごとく固定されていてゆらがない。
その世界の上で気持ちはゆらぐ。
彼らは自分が生きている世界を静かに受け入れる。

『ルチア・オンゾーネ、待つ』でも、世界はやっぱりゆらがない。
ルチアはそれを受け入れたくなかった。だから、抵抗した。
でも、たとえ受け入れたくない世界でも、自分は生きていたいのだと思い知り、その受け入れがたい世界で生きていくためには、自分が変わるしかないのだと悟った。
そして、彼女もやっぱり世界を受け入れたのだ。
世界を動かすのではなく、自分を変えたのだ。


ゆらがない世界の上でゆらぐ気持ちは、痛かったり、せつなかったり、ちょっと滑稽だったりするけれど、どの子も自分のキャパいっぱいいっぱいのところで、踏ん張って生きている。
その生命力をただ愛おしいと思う。
『アマリリス』はそんな短編集だ。


福島先生はもう『週刊少年ジャンプ』には戻ってこないのだろうなあ、と思うとさびしい。
でも、福島先生が描きたいものが描けているのなら、それはうれしいことだ。
そして、福島先生が描きたかったマンガが、とてもおもしろいのは、最高にうれしいことだ。


ところで私も小百合は福島先生のキャラの中で、一番の美人さんだと思います。うん。
あと、イーサン飯店のお兄ちゃんがめっちゃ好みなんだけど、やっぱり私、メガネくんが好きなんかなあ(爆)。