『アンデッドアンラック』(No.046 現在で会おう) 感想(短いお別れ)

表紙は、ヴィクトルとジュイス。
背を向けあっているけれど、常にお互いの存在を意識しあってる関係、ってイメージ。

ジュイスがいつになくこわい表情だな。
リーダーとしての厳しい表情はよくみせるけど、これは女として現実を直視してる、って感じの顔だ。
ヴィクトルの方は、けわしさの中にさびしさがまじってるって感じがする。


さて本編。
ヴィクトルをカプセルに封じ込めたけど、ヴィクトルの居ぬ間にその過去をのぞくのではなく、話し合いをしたいと言い出す風子ちゃん。
確かにね。アンディとヴィクトルの魂が別々ならば、ヴィクトルの了承なしで過去をのぞくのはどうなんかな、って気がするよね。


ヴィクトルやっぱり自力で出られるけど、あえて閉じ込められてくれてた。
出てきた時、カプセルの半分を頭にかぶってるのが、なんかめっちゃおもしろいな。
孵化したばっかのひよこかっ!

で、久々にでっかい海苔が出てきたぞ。
股間の海苔を粉砕されて、下唇をキュッてかみしめてるヴィクトルがおもしろすぎる。
で、結局、耐えられずに膝をつくという。
そうか……それはノイズとして処理しきれないのか……。
まあ、1話でアンディも耐えられなかった攻撃だもんな……。


本の中にしか存在していないifアンディに対して、風子ちゃんとヴィクトルは外部から差し込まれた魂。
だから、本の中こそが「現実」なアンディは現実でできることしかできないけれど、風子ちゃんとヴィクトルは想像だけで状況を変えることも可能、って解釈でOK?
存在のレイヤーが違う、ってことかな。


風子ちゃんに「お前はジュイスに似てるな」と言っておきながら、風子ちゃんに否定されたら「確かに品がないし、色気もない」って言い切るヴィクトル~。
それは「ジュイスは品もあるし、色気もある」っていう惚気ですか、そうですか。
背後で、アンディがむっとしてるのかわいい。

アンディは風子ちゃんとヴィクトルの会話に口を挟まないな。
風子ちゃんがヴィクトルと話し合いをしたいと言ったから、邪魔をしないようにしてるのかな。
それはそれとして、いちいち風子ちゃんの頭なでなでしたり、頭にあご乗っけたりして、べたべたしてるところが素晴らしいです。
ヴィクトルがジュイスさんを想って悶々としてるのに、その目の前でいちゃいちゃするとかちょっとは自重せんか、とは思うけど。


数限りない敗北を重ねて、神は殺せない、とヴィクトルは判断した。
でも、ジュイスさんはあきらめない。何度でも何度でも神に挑む。

「馬鹿な奴だ…」
「不死じゃないんだ…」
「死んで楽になればいいものを…」
自分は「不死」で、それはどうにもならない。
でも、ジュイスさんは死ねるんだから、楽にしてやりたい。だから殺す。

ヴィクトルが言ってた「殺さなきゃならない奴」はジュイスさんだったか。

「惚れた女が苦しむ様を見たい男がどこにいる」
ここのヴィクトルがめっちゃかっこええ。
アンディもヴィクトルも、このてのセリフを照れもせず堂々と口にするよな。

このセリフをきいたアンディは、俺もお前と同じ立場なら同じことを考えるかもな、って思ってそう。
で、風子ちゃんを殺したいと思うほどの状況を想像して、ちょっと落ち込んでそう。

でも、ジュイスさんが神に挑むのをやめられないのは、ヴィクトルを死ねるようにしてあげたい、っていう気持ちがあるからなんじゃないかって思うんだよね。
否定者たちの犠牲の上に成り立っている世界を、どうにかして変えたい、という気持ちは当然あるとして、自分があきらめたらヴィクトルの苦しみは永遠に続く、と思うと、やめられないんじゃないかな、って。
それこそ、惚れた男が苦しむ様を見たい女がどこにいる、って。

ひたすらループを繰り返すのも、自分がヴィクトルのことを忘れてしまったら、ヴィクトルが生きながらに死んでしまうからなんじゃないかな。
それでは「不死」が「ゾンビ」になってしまう……。
ヴィクトルはジュイスさんのことを忘れないから、ジュイスさんもヴィクトルのことを忘れたくないんだろう。

ていうか、性別がない頃からつきあいがあるふたりだけど、ヴィクトルはジュイスさんを「女」と認識してるんだな。


ヴィクトルに対する「不運」が封印カプセルだったのは、「進化の予兆」か。
病気になるとか、お金を失うとか、不運にもいろいろあるのに、風子ちゃんが起こす「不運」はこれまでずっと、肉体的なダメージばかりだった。
家族仲が良く、経済的にも問題なさそうな家の子供だった、幼い風子ちゃんがイメージする「不運」が、けがをするとか事故にあう、といったことぐらいしかなかった、という可能性は高い。
そして、そういう不運ばかり起こった結果、風子ちゃんが「不運」とはそういう能力だと思い込んでしまったんだろうな。
安野先生の言う「こうだと思い込むあまり、自分でさらにルールを設けてしまっている」という状態と考えれば、納得がいく。


ここにきて、「不運」の強弱は「好感度」ではなく「理解度」で変わる説がでてきた。
そういえば、好感度で変わるっていうのは、風子ちゃんがそう判断しただけで、実際にそんな感じで発動してきたけど、好感度が高いってのは相手を理解した結果だ、と考えれば「好感度」と「理解度」が連動しててもおかしくない。

風子ちゃんは多分、「好感度」では「神」を殺せない。
否定者たちに犠牲を強いている「神」を、風子ちゃんが好きになるのはむずかしいだろう。
でも、嫌いでも理解はできる。
だから、「理解度」をあげればいいのなら、「不運」で「神」を殺せる可能性が出てくる。

シェンの「不真実」は、アンディに対して効いたり効かなかったりってあたりをみても、完全に「好感度」依存だけどね。


死ぬまでジュイスさんはあきらめない。
風子ちゃんも死ぬまであきらめないだろう。
そして、ふたりをあきらめさせずにすむルートがみえてきた。
ここで、アンディとヴィクトルの目的は合致したように思う。
このふたりが同じところを目指すのなら、もう、おでこのカードをはずすのもこわくないんじゃないか?


1865年に何があったのかを、ジュイスさんは知ってるのか……。
それでもう、ヴィクトルのことをあきらめて、アンディのことを受け入れている?
そういえば、ロンギングで「正義も大志もない者に、人は動かせないよ、ヴィクトル」って言ってたけど、1865年に起きた何かで、ヴィクトルには正義も大志もない、と判断されちゃったのかな。

てか、ヴィクトルの中には確かに「正義」も「大志」もなくて、あるのはジュイスさんに対する執着だけっぽい。


外に出る方法が頬以外へのキスってどういう理屈だ? って思ったんだけど、なるほど、アンディにとっての最大の「不運」は、風子ちゃんと別れることだから、ifアンディと風子ちゃんの完全なお別れ=ifアンディが生きる本の世界の崩壊か。
これは要するに、オータムの能力に「不運」が勝ったということ?

前にキス未遂した時は、風子ちゃんに反応できる隙を与えて逃げられたんだけど、今回のアンディはそういう隙を与えず、了解もとらずにキスをした。
きっと、ヴィクトルの言葉の意味を悟って、風子ちゃんに悩む時間を与えないために、即行動を起こしたんだろう。
実際、風子ちゃん、泣いてるし。

ifアンディは144年も待って、ようやく風子ちゃんに会えて、ここにいれば風子ちゃんを独占できるのに、風子ちゃんを泣かせないために、自分にとっての最大の「不運」をみずから受け入れた。
アンディがかっこよすぎる……。

ふたりに背を向けて去るヴィクトルもね。


「俺は外の俺とひとつになって!! よりいい男になってお前を口説く!!」とか言ってるけど、これ以上、口説く必要あるんですか?
いや、現実アンディとifアンディがふたりがかりで風子ちゃんを口説くなんて、戦力過剰が過ぎるだろ。
次回はその戦力過剰アンディがみられるんだね……楽しみすぎる……。

安野先生はだいぶ心配だけど。



ところで、『ONE PIECE』1000回記念の『ジャンプ』表紙の『ONE PIECE』キャラとのツーショットが、アンディとスモーカー。
こうやってみると、アンディとスモーカーって似てるんだな。
大柄で筋肉質で銀髪を後ろに流してる豪快系キャラ。
アンディにも葉巻をくわえさせたくなるな。

番外編の不死海賊団の海賊旗がかっこいいな。
シェンとムイちゃんがいちゃいちゃしている。
タチアナちゃんがなぜかガイモンになっている。
ジーナさんはなぜか鳥さんになって、アンディ船長のほっぺたにすりすりしている。かわいい。
アンディの胸の「1865」が「1000」になってるの細かいな。
そして、安定の風子ちゃんお姫様抱っこ。ていうか、風子ちゃんはお姫様設定なので、二重の意味でお姫様抱っこだった。
あと、風子ちゃんに嫉妬して、バタバタしてるジーナ鳥さんもかわいいよ!

というわけで、番外編めっちゃおもしろかった。
贔屓目抜きで今回の番外編の中で、アンディが一番、海賊コスが似合ってたと思う。
やっぱり、主役陣の中でアンディが一番(というか唯一?)悪役顔なんだな。


ところで、2020年、最後に見たのがこのTwitterの絵でした。
お箸使えるのに、風子ちゃんにお蕎麦を食べさせてもらうアンディ……幸せ……。