『アンデッドアンラック』(No.067 花火) 感想(散る夏と咲く花火)

今回のユニオン調査報告書のテーマは「不真実」と「不正義」の違いについて。
「不真実は手段を逆にし、不正義は目的を逆にする」というのはなかなかわかりやすい説明だな。

「不真実」の場合は、「次の攻撃は左で行こうかな~、いや、右もいいかも」みたいなことを相手が考えてると、コンマ1秒ズレただけで、効果が真逆になる可能性があるっていう話だよね、これ。
超めんどくさい。

そして、「不正義」の場合は、「ユニオンにつこうかな~、いや、アンダーもいいかも」だと、おそらくまったく効果が出ないことになる。
そして、「ユニオンを裏切ってアンダーをつくって神を倒す!」の人と、「ユニオンに忠誠を誓って神を倒す!」の人は、「神を倒す」という目的に作用するから、同じ効果になって、「神殺しを妨害する」になるんじゃないかな。
これはこれでたちが悪い。


さて本編。
シェンとメイちゃんとファンがまだ一緒に暮らしていた頃の回想。
「ジジ…」まで言いかけて「師匠」と言い直すシェンがかわええです。
この頃のシェンは普通にファンになついていたし、メイちゃんも遠慮がちではあるけれど、ファンをこわがってる様子はない。
メイちゃんにとっては、ファン⇒じいちゃん、ロウ⇒父ちゃん、シェン⇒お兄ちゃんという普通の家族。


現在に戻って、アンディ指揮の下、ユニオンのサマー討伐戦がはじまる。
風子ちゃんに「不運」チャージを頼むアンディ。
「どの位?」ときかれて「任せる」って応じるあたり、風子ちゃんの反応を試してたりしませんか?
で「チュ…ほっぺチューでいいです?」って、口にチューしようとして思いとどまったのか? 風子ちゃん。
恥ずかしかっただけなのか、ほっぺチューじゃないと効果がデカすぎると思ったのかがとっても気になるわけだけど、どっちにころんでもおいしいな、これ。


「お前等は今までのループで一度たりとて夏を倒せなかったのだから」
つまり、この四季戦までたどりつけたループはあった、ということか。
ビリー様が「全員参加…来たか」とつぶやいていたし。
この四季戦がユニオンがこれまでにクリアできた最高成績のような気がするな。

これまで一度もサマーを倒せなかったとしても、今回は攻略法が事前にバレている。これは、これまでになかった超有力なカードだろう。


「作戦開始だ!!」のとこの見開き、めっちゃかっこいいよね!
でっかいビルを背景に、おおきくうねってるサマー、シェンとムイちゃんをのせて飛ぶ金斗雲、チカラくんをおんぶして駆け出すトップくん、タチアナちゃんの装甲に大きく刻印されているユニオンのエンブレム。
ほんとにかっこいい。

そして、如意棒を口に突っ込まれて、ピーンってなったサマーは、なんかおもしろかったけど、その後でとぐろを巻かされて、なんか気の毒になった。
サマーの長い図体がこんな形であだになるとは……。

ところでチカラくんは「トップさん」呼びなのね。
年下でもさん付けのチカラくん。礼儀正しい良い子。
でも、トップくんには呼び捨てでいいって言われてそう。

トップくんに「不停止」で超スピードで運ばれたチカラくんが「不動」でサマーを固定。
ニコ開発のゴーグルで、対象物だけをトリミング(?)して固定できるようにした模様。
なるほど、視界に入っちゃうとユニオンのメンバーまで動けなくなるデメリットを技術力で解決したのか。
「不動」は超便利能力だけど、単体だとただのだるまさんがころんだ機能だからな。

アンディは「不運弾-アンラックバレット-」についで「不運死道-アンラックデッドロード-」を開発。
これ、アンディの技名に「アンラック」を冠しただけなんだけど、なんかめっちゃ中二病感があるな。

固定されたサマーに、「不運」が付与された血を振りまくアンディ。
なるほど、そんなこともできるのね。
「出来るさ。俺が出来ると本気で思えばな」
修行の成果がここにも!

「お前が教えてくれたんだろ?」
「ハハ、うん!!」
のとこの風子ちゃんの笑顔がなんともいえず良い。
本当に気を許してるんだな~って感じで。

で、最後に動けなくなったうえに、「不運」が付与された血をつけられたサマーに、タチアナちゃんがつっこめば攻略完了! か。
なるほど、タチアナちゃんの攻撃は指向性がなく、ただUTフィールドに接した部分を破壊していくだけだけど、「不運」があれば確率100%で一番ダメージのあるところ、すなわちすべてのコアを的確に壊すことができる、というわけか。

ひとりでも欠けていたら完成しない、無駄のない連携プレーがすばらしすぎる!

仕上げにアンディの頭に不壊刀が突き刺さってて笑った。
なるほどこれが5%分か。


オータム戦と同じく1話で片が付いたサマー戦。
でも、ここにいたるまでのルートを考えると

もし風子ちゃんがアンシーンに殺されていたら⇒アンディがサマー討伐に駆け付けられない⇒ファンから「死亡遊戯」を奪えない⇒シェンはキョンシーになれない⇒ムイちゃんが「不真実」を引き継いでもシェンを殺したファンには使えない⇒ムイちゃんも死亡⇒アポカリプスから攻略法を引き出せない⇒地球終了

という流れになっていた可能性が高い。
そもそも、安野先生がアンディに修行をさせなかったら「不運死道」もないので、この点でも詰んでいる。
だから、ひとつでも要素が欠けていたらアウト、というギリギリの戦いだったわけで、それがこんなにもあっさり片付いたようにみえる、というのは逆にすごいな、と思う。

このサマー戦の隠れMVPはアンディに修行をさせて、風子ちゃんを死なせなかった安野先生と、ゴーグルで「不動」の能力を拡張させたニコなんじゃないかな。


あと、今回、能力名のちょいデカフォント連発もかっこよかったよね。
ちょっと斜めってスピード感がある「UNSTOPPABLE-不停止-」、どんと落ち着いた「UNMOVE-不動-」、サマーのコアが装飾にもみえる「UNTOUCHABLE-不可触-」。
どれもかっこええ。

あと、今回、タチアナちゃんがいさましくてかっこよかった。
最近ちょっと落ち込み気味だったので、元気な姿をみせてくれるのうれしい。
でも、他の6人(5人+1キョンシー?)がペア行動だったので、タチアナちゃんだけひとりでコマにおさまってるのはちょっとさびしい。
はやいとこあの装甲にはりついてくれないかな、ビリー様。


ファンを殺さなかったシェン。
問うのは遠い日の花火の想い出。
屋根の上で、家族みたいなことをした想い出。
メイちゃんを肩車してあげてるロウさんやさしい。
屋根の上ってだけでも十分に高いのに、もっと高いとこ、花火に近いとこで見たいとメイちゃんにねだられたんだろう。

「俺は一度だってお前らを家族などと思ったことはない」
そう答えるファンをみつめるムイちゃんの目が、「不真実」が発動していることを示している。

おそらくは、喋る気がないのに喋らされ、思っていることと逆の言葉が出たんだろう。
つまり二重に逆転している。
このサマー編の最初のとこで、ムイちゃんが思っているのと反対のことを喋らされてしまっていたように。
そう考えると、あれはただのいちゃいちゃではなく、このファンの言動の意味を示すために必要なくだりだったんだな。
いや、ただのいちゃいちゃでもまったくかまわなかったんですけど!

これ、シェンが「アンタはどう思ってたんだい?」ってきいたのは、そっちの方向に思考を誘導させて「不真実」でひっかけやすくするためかもしれん。
シェンは「不真実」のエキスパートだからな。
ムイちゃんはラグナロク二歩手前という土壇場で「不真実」を手に入れてしまったけど、シェンがついていればちゃんと戦力になれるよね。


ほんの少しだけかもしれないけれど、ファンにもロウさんとシェンとムイちゃんを家族のように想う時間があった。
けれど「天下無双」への欲求はそれを覆い隠すほどに大きかったんだろう。
ファンがしきりに、大事なものを失うほど強くなれる、と言っていたのは、それが自分の中に確かにあったからなのかもしれない。

ファンは外道だけれど、たまには揺れることもある。
シェンは妹を殺したファンを許さないけど、一緒に花火をみた時間を忘れ去りたいとも思わない。

そういう、あやふやというか、裏腹なものを許容するのが、このマンガのステキなところだと思うんだ。
それを表しているのが「不真実」と書いて「しんじつ」とルビをふったところだと思うんだ。

「そっか」の一言で、シェンはいろんなものを呑み込んだんだと思う。
そういうものを呑み込める程度には、シェンは大人になっていたということだ。
おそらくファンが何も変われずに過ごした十数年という時間は、シェンを変えるに十分な長さだった。
でも、ムイちゃんに出会わなければ、シェンも変われないままでその時間を過ごしたんだろうね。


ファンは生き延びたけれど、これからどうするのかね。
ユニオン本部に連れていって事情聴取かな。
あと、ファンがコレクションしていたアーティファクトはどうなるんだろう。


ラストの見開きで、チカラくんの頭をアンディがなでて、トップくんが背を叩いて笑っていた。
多分、チカラくん、感極まって泣いているんだろうな。
チカラくんがユニオンに入って、はじめてみんなの役に立った、と実感できたんだろうな。
加入してはじめての円卓会議でビリー様が反乱おこして、その時は何もできずに避難することになったから。


前回、ラストページの見開きで、そびえたつビルの向こう側を悠々と泳いで(?)いたサマーは、今回のラストページの見開きで花火になった。
そして、正面を向いて「了解!!」と気合いをいれあっていたユニオンのみんなは、背を向けて散る「夏」をおだやかに見送っている。
そういう対比がきれいにきまった、サマー討伐編の終幕でありました。


ウィンターはおそらくラストにまわされると思うので、次はスプリング編か?
出番のなかった一心とフィルに活躍して欲しい!

あと、ファンという駒を失ったビリー様はどう動くのかな。


ところで、公式Twitterさんの数週前のつぶやきはそういうことだったんですね。