『アンデッドアンラック』(No.119 超えられなければ) 感想(ルールは常に不公平)

ビリー様がユニオンを裏切りアンダーを創ったことと、ユニオンに加勢することは矛盾してると指摘するルイン。
確かに、ビリー様の行動だけみてるとわけわかんないよね。

「俺が手を貸すのはルールに抗う者だけだ」ってのが、かっこええです。


ビリー様の銃と「不変」を組み合わせた攻撃、かっこいいけど、めっちゃ難易度高そう。
そもそも、複数の否定能力を組み合わせて戦うのは、かなり頭の回転はやくないとむずかしいよね。

それにしても、ビリー様の腕が簡単に飛ばされちゃうのめっちゃ痛い。
治らないのならなおさら。

タチアナちゃんと風子ちゃんがなんで「不死」を使わないんだ、って言ってるのをきいて、アンディが悔しそうな顔をしてるのは、それが自分が条件を満たせないためだと理解してるから。

「使えないんだ。キミ達が優しいからね」
ジュイスさんとアンディは大体、勘づいているけれど、風子ちゃんとタチアナちゃんは気づけない。
ジュイスさんとアンディは自分の能力を実際に使われてしまって、その後、使えなくなってるのをみてるから、察することができたんだろう。
でも、風子ちゃんとタチアナちゃんは一度も条件を満たしたことがないから、わからないんだろうな。


「あ!? ビリーのおっちゃんか? なんだよ! やっと反省してユニオンに…」
トップ、一心さんが撃たれたと思った時は、本気でビリー様を殺しにいったのに、反省するんなら戻ってきてもいい、になってるんだな。
まあ、一心が生きてるからいいのか?
ビリー様が本気ならば一心さんが無事なのはおかしい、って考え直したのかも。

でも「風子をルインに殺させたのは俺だ」と言われた途端、すぐに元通りか。
まあ、風子ちゃんを殺させた、は許しがたいよな……。

てか、トップ君、一心さんをおぶってどこを走ってるの?


「不動」を使うのに、「タチアナを殺したよ」って言ってるのは、ビリー様、チカラくんの気持ちに気づいてる?

そして、チカラくんは本部内にいる?


「僕は音で視る」
なるほど、「不動」は視界に入っているものを動けなくするけれど、ビリー様は視界がそもそもなくて、拍車をソナーにして状況を感知してる。
それを「視る」と定義付ければ、全方位を「不動」の対象内にできるのか。

その能力と共に生きている元々の能力者が一番うまく能力を操れる、という話が何度かでてきたけれど、初めて本家よりも便利に能力を使ってるパターンをみたような気がする。


「対象から敵視される事でその能力をコピーできる」
なんとなく、「信頼」を失ったらコピーできるのかな、って思ってたんだけど「敵視」される、が条件か。
信頼を失う、と、敵視される、は似てるようで違うよなあ。
敵視、の方がより具体的というか……。
嘘をつかれて信じられなくなる、ってのはあっても、敵認定するまではなかなかいかないと思うんだが。

ジーナさんの後継の「不変」とか、建築家の「不均衡」とか、探し出して敵視される、ってのは、なかなか手間がかかりそうな気がする。
まあ、敵視されるのは、銃でギリギリ当たらないように狙って撃つ、とかすれば簡単か?
否定能力者になってしまって途方に暮れているであろう人に攻撃を仕掛ける、っていう心理的負担はすごそうだけど。

ジュイスさんやアンディみたいな戦い慣れている人は、即断即決というか、敵認定の判断がはやいのかもしれない。
逆に、風子ちゃんやタチアナちゃんは、信頼していた人がこんなことをするのは何か事情があるんじゃないか、とか考えちゃって敵視までにかかる手間が大きそう。
アンディは、風子ちゃんを攻撃するならどんな事情があろうが敵、ってなりそうだな。

そうなると、感情の起伏がほとんどみえないフィルくんからも、やっぱりコピーはむずかしいのかな。
「不感」が使えるのなら、アーティファクト装備し放題でめっちゃ便利そうだけど。


「戦うべきでない子がいる」のコマでタチアナちゃんが、「生きる事で精一杯の子がいる」のコマで風子ちゃんが描かれていた。
そうか、ビリー様には風子ちゃんは生きる事で精一杯にみえていたのか、ってなった。
確かにはじめのうちは私にもそう見えてたけど、途中からなんかそういう感じじゃなくなったな。
アンディがずっとそばにいてくれてたからかもしれないけど。

ていうか、「生きる事で精一杯」だから死のう、から、「生きる事で精一杯」だけど自分にもできることがあるようだからもっと精一杯に生きなきゃ、に変化したって感じかな。


「僕だけが嫌われ、一人で闘えばいいと思ったんだ」
ここのビリー様が清々しい表情してて泣ける。
ずっと懺悔したかったんだろうな。
否定能力を得て、すでに傷ついている人たちを、さらに傷つけたことを。

「馬鹿だろ? 悪役なんてできないくせにな」
自分がすべて背負おうと思ったのに、結局、完遂することができなかった。
多分、ビリー様は自分が特別にすぐれた存在だとは思っていない。
それでも、自分の能力は他の人が背負っているものを肩代わりしてやれる能力だとは考えていたんじゃないかな。

それなのに、一番のキモになるはずの「不運」を手に入れられなかったことで、皆を苦しめたあげくに自分一人では「神」殺しを達成し得ないと理解してしまった。
いくらなんでも苦しすぎるだろ、この立場。


「UNFAIR -不公平-」か……予想はされていたけれど、ついにビリー様の能力が明かされた。
これでついにユニオンの能力者すべての能力名が出そろった。

それにしても、コピー能力ってのは異能バトルものではよく出てくるけれど、それに「不公平」と名付けるセンスがすごいな、戸塚先生。
公平に1個ずつ、を破って複数持ちができるから「不公平」。
でも、そもそも否定能力自体がいらないんだよ!
だから全然「不公平」なんかじゃないんだよ!


で、よく考えてみたら「不公平」って、使おうとしなければ生活に困ることなさそうじゃない。
他の能力はだいたい生活するのに不都合が生じるし、タチアナちゃんにいたっては、誰かに食事の世話してもらえないと餓死するからな。

それなのにビリー様はわざわざ否定能力者を探し出して使ってるんだよ。

「神」の目的が、否定能力を得て苦しむ人間がみたい、というということならば、わざわざ自分から苦労を買って出ちゃうような人に割り振らないと意味がない能力のように思えるのよね。
それに合致しちゃったのがビリー様なのかな……。

それとも、伏せられてるだけで、何かしらのデメリットがあったりするのかな。


一度は敵に回った味方が主人公のやさしさに心打たれて改心する、と書くとちょっと安っぽい感じになるけれど、みんな、精一杯「神」に抗っているんだよね。
でも、精一杯をひたすら重ね続けてきたジュイスさんとヴィクトルでさえ負け続けてるのが現実なんだよ。

ビリー様が自分の心を切り捨てて、風子ちゃんとタチアナちゃんを思いやっていたことを、トップくんとチカラくんにも伝えて欲しい。