『チェンソーマン』(第12話 揉む) 感想、ついでに、私的メロドラマ論

今回の『チェンソーマン』を読んで、いろいろぐるぐると考えてしまったので、別記事にしてしまいました。
チェンソーマンにあんまり関係ない話を含んでいるので、そういうのが苦手な方には申し訳ないです(でも書く)。


胸を三揉みする許可をもらったデンジ。
三揉みってなんなんだそれ、と思ったら、デンジに受けた恩の数らしい。
「ありがたく揉むんじゃな!」って言ってるパワーちゃんの顔がなんともかわいらしい。

で、デンジがめっちゃ緊張して揉んだのは胸パッドだったという……。
いや、悪魔が胸を上げ底するってどういうことなの。
上げ底がなくなったパワーちゃんのことを「スッ」って擬音で表現するのめっちゃおもしろい。
そして、呆けたようなデンジの表情がまためっちゃおもしろい。

「さあ! あと二揉みじゃ!」と言われて、言われたので機械的に手をのばしてしまった、という感じのデンジ。
一揉み目はあんなに緊張してたのに……。
あれは、いろんなことが脳内を駆け巡りすぎてキャパオーバーおこしてるんだろうな。
一回目と違ってホンモノなのに……。

「おっ」って言ってるパワーちゃんがめっちゃかわいくて、パワーちゃんもちょっとデンジに気があるんじゃないのか、って気がするんだけどね。
デンジの肩組んで、「ガハハハハ」って笑ってたのも、パワーちゃんなりの照れ隠しなんじゃないか、と。
う~ん。パワーちゃんに夢みすぎなのかな。

あんなにはりきって、興奮して、死にかけて、それでも欲しがってた報酬が「こんなモン」になってしまったデンジ。
寝ても覚めても魂が抜けたみたいな状態に。
いや、がっかりしすぎだろ、と思うわけだが、デンジ的にはそれほどの落胆だったんだな。

で、そこに付け入るのがワルイ女・マキマさんですよ。
めっちゃ欲しかったものが手に入って、でもそれが「こんなモン」としか思えなくって、これからもこんな経験繰り返すのか? それなら追いかけても手に入らなくて、悔しさにころげまわってる方が幸せじゃないか? というデンジのクエスチョンに見事なまでのアンサー。
するっと手に触れて、指をからめて、耳を触らせて、指を噛ませて、胸に触れさせて……って、いちいちエロすぎる。

ていうか手慣れてる?
もしかして、アキもこんなんで懐柔されたんじゃなかろうな。

で、もうマキマさんのことしか考えられなくなるような状態にしといて、「お願いがあるんだけど、いいかな?」だよ。
いいかな? じゃないだろ! どうみても断る余地がないだろ! それがわかってるのに、「お願い」してる体を押し通すというこのマキマさんの悪魔っぷり。
そのうえ「キミは他のデビルハンターの誰よりも特別だから」と、微妙に自尊心をくすぐる手管がすごすぎる。

ここ、寝転がってるデンジに対して、椅子に座ったマキマさんが見下ろす姿勢になってるのもなんかいいよね。
多分、ものすごく難易度の高いことをお願いしてるのに、なんてことないって感じで、余裕たっぷり。
無理強いをしてるわけじゃないよ、デンジが勝手に無理するだけ、みたいな。

いや、すごいな。
ここまで強キャラ感を出してくる女性キャラは久しぶりにみた。
マキマさんすばらしすぎ!

はたからみれば「おまえ利用されてるだけだろ」なことにまんまとハマっていく。
でも、デンジは多分、これまで生きてきた中で、今が一番に幸せな瞬間なんだろう。
そして、マキマさんはそれよりもさらに上の幸せを提示する。

マキマさんはデンジを幸せなまま殺そうとしているとしか思えない。


さて、ここから、感想をはずれた蛇足。

2話目を読んだ時、私はこのマンガは「萌え系」なのかと思ったんだよ。
でも、今回のを読んで、「メロドラマだった……」って思ったんだよね。

「メロドラマ」というと想像するのはお昼あたりにテレビでやってる愛憎のもつれがなんたらかんたらみたいなものを想像するかと思うんだけど、私の中の「メロドラマ」はちょっと定義が違うんだよね。

思うにメロドラマというのは、主人公が一途に想う人がいて、でも、その一途に想う人にとって主人公は一番ではなくて、他に大事なものがある。だけど主人公がどうでもいい存在というわけでもなくて、それなりに必要としているので、手放すということはしない。
主人公はたまにもらえる愛しい人からのおこぼれを大事に大事に抱え込みながら生きていて、クライマックスでほんの一瞬だけ愛しい人に振り向いてもらえるんだけど、振り向いただけでやっぱり去っていってしまう、みたいなのが私にとってのメロドラマなんだよね。
端的に言うと、周囲からみるとどうみたって報われていないのに、主人公の気持ち的には十分に報われている、みたいなのが主軸にあればそれがメロドラマ。

で、今回の『チェンソーマン』はまさしくそれだったのね。
なんと! 大好きな『ジャンプ』に、私の大好物のメロドラマが登場するとわっ!
これからストーリが進展していって「やっぱりメロドラマじゃなかった……」ってなるのかもしれないけどね。