『アンデッドアンラック』(No.086 私の鎧は) 感想(壊したくないなら怖がるな)

でっかい「一心の墓」の前から始まった今回。
たくましい父とかわいい娘さん。
「父上」とか時代がかった呼び方してるし、一心さんが使っている言葉もいちいち時代がかってるし、この隠れ里みたいなところは外界とほとんど交流をせずに暮らしているんだろうな、と思わせる。

一心の一族は代々「一心」ていう名前で、「不壊」を受け継いでいるってことらしい。
でも、順繰りに受け継いでいくのではなく、爺ちゃんから息子をスキップして孫娘に引き継がれた。
その爺ちゃんが、アンディがユニオンに捕らえられていた時期の「不壊」なんだろうな。

シェンからムイちゃんに引き継がれたのも「神」のいやがらせとかではなく、なんらかの法則性があったりするのかな。
でも、一心の一族も、血族の間で受け継ぐことはできても、だれが引き受けるまではコントロールできないっぽいな。
コントロールできるのなら、強くて戦う意志と能力を持っている父親が引き受けたに違いないと思うので。
だって、まだ幼くて気弱な娘に、こんな重い役目を背負わせたくはないだろう。
でも、娘が継いでしまったからには、「不壊」の能力と「一心」の名と共に生きろ、と言い聞かせるしかないのだろうな。

でっかい「一心ノ墓」に字が刻まれているのは、代々の「一心」の本名かもしれない。
爺ちゃんも息子も孫娘も「一心」じゃさすがに不便だから、家族内での呼び名ぐらいはつけているんじゃないかな、と思うので。


父親に「これからはお前の不壊がこの村を守るのだ」って言われて、「……うん」ってちょっと沈黙が入ったのは、自分なんかがこの村を守れるんだろうか、と思ったんだろうな。
でも、父親の言葉を否定するなんて発想すらない、従順な子供だから「うん」と言うしかなかったのかな、って。


さて現在、「やっぱ無理で候!!」って言われても、アンディはスプリングに操られていて、手加減してやることができない。
風子ちゃんに「手加減してよアンディ!!」って言われても、無理なものは無理。

すると一心は地面を削って不壊の壁をつくりはじめた。
一心は風子ちゃんの独楽だから、自分の意志で動くことが可能らしい。

そこに突然の落雷。
これは「神」の雷なのかな。
「春雷」って言葉もあるから、スプリングの能力のひとつかもしれん。
どちらにせよ、スプリングはたまたま雷が落ちた、と言い張るよね。


昔、一心の村をおそった「妖怪」。多分UMA。
立ち向かったのは、娘の一心がつくった鎧をまとった父親の一心(←ややこしいな)。
まだ子供の一心はご先祖様に無事を祈るしかできない。

そして、妖怪は倒されたが、「不壊」の鎧も壊れた。
自分がつくった鎧がちゃんと「不壊」だったら父親は死なずに済んだ。

これまでの否定者たちは、ある日、突然、否定能力に目覚め、わけがわからないまま大事な人を失ってしまったけれど、一心は逆で、力を持っていることは知っていたけれど、それを使いこなすことができずに父親を失ったのか。
これはこれでキツイな……。

なるほど、一心が怖がってユニオンのみんなの鎧をつくらない、ってビリー様が言ってたけど、この経験が尾を引いているのか。

「不壊」はもしかして、否定者本人が「壊れない」と自信をもってつくったものでないと「不壊」にはならないのか?
もしかすると、それをつくった「不壊」が死んだ時点で、つくったものは「不壊」じゃなくなるのか?
死後も使えるものならば、先代の「不壊」が作った鎧を使えばよかったわけだし……。


ここで風子ちゃんが、自分が流した血にアンディを触れさせて「不運」を付与する、という荒業を発動。
風子ちゃんを噛んでるクロちゃんが「これはコイツへの攻撃…」「協力じゃなく攻撃…」って念じてるのは、そういうことにしておかないと、「神」に洗脳されてしまうからだろうか。
これまでいろいろ協力してきてそういう言い訳は通るのか? って思うわけだが、自分を着た人間に理想の服を提供しないと乗っ取れない、というルールに従って動くしかない、という言い分が通り続けてる感じなのかな。
それとも、四季UMAに比べれば下っ端なので「神」の監視が緩い?

対サマー戦で、アンディが自分の血に「不運」を付与する、ということをやってたんで、風子ちゃんはそれを参考に思いついたのかな。
これなら、直接、アンディに触れなくても「不運」を届かせられるので、いろいろ応用がききそうだけど、アンディは風子ちゃんに血を流させることを、良くは思わないんじゃないかな。


「不運」でアンディを吹っ飛ばして、一心には「不壊」のシェルターで耐えてもらう。
そのために、あまり大きな「不運」を起こすわけにはいかない。
なので「大粒の雹!!」を呼ぶつもりだったらしいが……。

ビリー様「雹…なのか?」
スプリング「ありゃどーみても」
アンディ・一心「隕石だ」
見事な連作の五七五! 仲良しさんか!

流れる血に触れただけで隕石降ってくるとか、風子ちゃん、アンディのこと好きすぎじゃないですか?

「加減できなかったのかよ!!」
「意識したけどこうなりました!!」
って、風子ちゃん、なんでセリフが上司への報告みたいな感じになってるの。


ここでみずから場外に出て、鎧姿に戻った一心。
その鎧の中から現れたのは、いろいろでかいお姉さん!
腹筋ばっきばきでゴッツイけどかわいい!

そうだよね、一心は刀鍛冶でもあるから、そりゃあ筋力必要だよね。
てか、あの重そうな鎧は自前の筋肉で動かしてたのか?
ニコが自動アシスト機能つけてそこそこの筋力でも動かせるようにしてるのかと思ってた。

このお姉さんがトップくんを肩に担いでたかと思うと、なんとゆーか、萌えるよね!
コミックス全巻読み返して、一心の出番を全部、この姿で脳内置換すると、めちゃくちゃ盛り上がるよね!
このお姉さんが着地に失敗して尻もちついてるとか……かわいすぎる……。


仲間の鎧をつくることを怖がっていた一心が、「不壊」の鎧を風子ちゃんに着せた。
そして、自分のからだは職員さんたちの小判と共に、壁をつくって守った。

「私の鎧は壊れない」で「UNBREAKABLE -不壊-」のフォントがドーン! って、かっこいい!

この見開きページの右側の真ん中のコマにいるのはジュイスさんかな。
先代の「不壊」が亡くなった時、それを継いだ娘がまだ幼かったのでユニオンに入れなかったけど、父親を失ったときいて迎えにきたのかな。


風子ちゃんが自分を信じてくれたから、一心も自分の「不壊」を信じた。
大事なものを壊されたくないから、怖かった。
だけど、怖がらなければ、壊されずにすむのだと、一心は信じることができた。

もう一心はみんなの鎧をつくることができるだろう。
でも、ユニオンがみんなあの鎧を着たらすごい絵面になるよな……。
まあ、アンディは必要としないし、タチアナちゃんは着れないけど。


というわけで、独楽対決は一心が先に場外に出てしまったためスプリングの勝ちらしい。
いや、独楽対決がまさかの一心覚醒ターンになるとはな。

負けはしたけど貴重な「不壊」の能力が安定的に使えるようになったのはでかいのでは?


ところでビリー様はあの惨状の中で平然としてるけど、これって「不変」バリアで防いでる?


戸塚先生が巻末コメントで「スプリングの七五調台詞書いてると他のキャラも引っ張られそうになっちゃう!」って書いてらっしゃるけれど、「そうになっちゃう」ではなくすでにそうなってる気がします……。