『破壊神マグちゃん』(最終話 夢見るままに待ちいたり) 感想
月曜の朝に読んでボロ泣きした。読み返すたびに泣ける。読み返さなくても思い出しただけで泣ける。
それがいまだに続いている。
大好きなマンガだけど。ずっとアンケートいれてたし、コミックスも紙と電子、両方でそろえてるけど。まさかここまでダメージくらう最終話をお出しされるとは思わなかった。
前回、最終回じゃないとコメントしつつ、わざわざラストに「完」と書いたのはどういうことだ、と思ってたんだけど、前回までがマグちゃんとルルちゃんの物語で、今回はマグちゃんの物語なのかな、って思った。
もしくは、前回が日常系コメディとしての最終回で、ただコメディマンガとして楽しく終わって欲しいのなら、ここで終わったと思ってくれて良いですよ、という上木先生のメッセージなのかも、と。
でも、『破壊神マグちゃん』という物語は、こういう終わり方をするべきマンガだったんだな、と最終話を読んでものすごく納得した。
今になって思うと、「第43話 灯火の尽きる日」はこのマンガの折り返し地点だった。
長さ的にもだいたい中間地点だし。
「灯火の尽きる日」でルルちゃんはマグちゃんに、「来年も再来年も…これからもずっとあたしと一緒にいてね」と願い、マグちゃんは「うむ…よかろう」と応えた。
ずっと、誰かに面倒をかけることをおそれ、母親にも負担をかけまいと中学生にしては過剰な振る舞いをみせていたルルちゃん。
それは、そんなルルちゃんのことを理解しているおさななじみの錬くんが、風邪をひいた時にお見舞いにいくことを控えるほどのかたくなさだった。
そもそも、あれだけ娘を大事にしているお母さんが、中学生の娘に独り暮らしをさせる決断をしなければならなかったのも、そうしなければ母の枷になることをおそれるルルちゃんが、自分自身を追い詰めて壊してしまうと考えたからなんじゃないかと思う。
そんなルルちゃんが、マグちゃんに泣いてすがった。
それは、マグちゃんが人間だったら、絶対にしなかったことかもしれない。
父親が病気で弱って、どんどん死に近づいていく様を見届けたルルちゃんは、父の最期に「待って、やだよ…いかないで」と泣いてすがった。
それは無理な願いだとわかっていても。
でも、マグちゃんは「神様」だから、自分を置いて死ぬことはない。
どこにもいかないで、という願いを叶えてくれる存在だ。
ルルちゃんは、絶対に失われない、と信じられる存在に泣いてすがることで、ようやく心の安寧を得た。
そして、ここから、この物語は、ルルちゃんの喪失の物語ではなく、邪神たちの喪失の物語にシフトしていったような気がする。
大事だった少年を模り、人間を自分の思い通りの存在にしようとしたミュスカー様。
墓標の数を増やしながら身を削り続け、ありのままの人間の在りようを愛で続けるウーネラスさん。
その姿は、マグちゃんがたどるかもしれない未来を示していたんだろう。
けれど、マグちゃんはそのどちらにもならなかったんだな……。
ルルちゃんの「ずっとそばにいて欲しい」という願いを受け入れたマグちゃん。
でも、その願いの先にあるものが何かを、マグちゃんは知らなかった。
それを知っているミュスカー様とウーネラスさんも、それを教えることはしなかった。
多分、言葉で教えてあげられるものではないとわかっていたんだろうな。
年老い、死の床にあるルルちゃんに、懸命に空の美しさを説明していたマグちゃん。
以前、「今日はマグちゃんと空を見てるから、今のあたしは幸せだよ」ってルルちゃんが言ったから、もう外には出られない状態のルルちゃんに、ひとりで見た空の美しさを説いて、この世界にとどめようとしたのかな、って思った。
「…待て、頼む…。まだ逝くな…」
あの常に尊大な態度を崩さないマグちゃんが、「頼む」とせっぱつまって言った。
けれど、その願いは届かない。
「こうして感情を持たぬ破壊神は初めて孤独という感情を識った」
ルルちゃんの孤独を破壊してやると言っていたけれど、マグちゃんには実はその意味がわかっていなかったんだな。
ただ、自分がそばにいれば、ルルちゃんの孤独は破壊されると知ってただけで。
おっきなお目々に涙をたたえ、しょんぼりと歩くマグちゃんの姿が、あまりにもよわよわしくて、本当に泣ける。
本当に、こんなに線が少ない造形なのに……どうしてそう感じるんだろうな……。
「孤独」を知ってしまったマグちゃんのために、ミュスカー様は泣いてくれた。
イズマくんも、長年の友を失った悲しみに耐えながら、マグちゃんの気持ちを慮ってくれた。
ウーネラスさんは懸命に平静を装っているようにみえる。
ウーネラスさんとイズマくんは、ルルちゃんがいなくなって危険性が高まったから、という理由で封印すると言い出したけれど、マグちゃんを眠らせてあげたかっただけなんだろうね。
その眠りの中で、マグちゃんは再びルルちゃんに出会った。
マグちゃんが忘れないから、ルルちゃんも存在し続ける。
ルルちゃんは死という『破滅』の向こう側に『存在』していた。
マグちゃんの権能がここにつながるかよ……。
マグちゃんがルルちゃんの死を受け入れたことで、ルルちゃんは永遠の存在になったんだな……。
封印が解けたマグちゃんをみつけてくれたルリちゃんは、ルルちゃんの子孫かもしれないし、そうじゃないかもしれない。
それは多分、マグちゃんにとってはどうでもいいことだ。
ルルちゃんの物語は終わり、マグちゃんは少女の願いを叶えるという約束を果たした。
そして、マグちゃんの物語は終わらず、おっきなお目々で「ニンゲン」をみつめ続ける。
それだけだ。
けれどもう、マグちゃんは「ニンゲン」を「下等生物」とは呼ばないんだろうな。
ところであの狂乱食堂の中にはナプタークくんがいるのかな。
ミュスカー様が運命操作で、マグちゃんがあそこにたどりつくようにしてくれたのかもしれない。
ナプタークくんはからあげとプリンでマグちゃんを出迎えてくれるかもしれない。
いつか、ウーネラスさんとミュスカー様とノス子さんも、ひょっこり姿をみせるかもしれない。
全体的にキツイお話だったけれど、そんな楽しい想像ができる余地を描いてくださった上木先生に感謝です。
「皆様の温かさに包まれて無事完結に到りました!!」というアオリ文がめっちゃうれしかったです。
そして、GIGAに追加エピソード! それも錬くんメインらしい!
ここんとこ錬くんの出番がほとんどなかったけど、GIGAでめいいっぱい出すからだったのか?
上木先生は「誰かにとっての良い漫画になってたら嬉しいです」と巻末コメントに書いていらしたけれど、「良い漫画」どころではないです。
一生、大事にするに違いない漫画です。
ひとまず『破壊神マグちゃん』はこれで一区切り。
このマンガは、めずらしくリアルの時間の流れとマンガ内の時間の流れが同期していて、マグちゃんとルルちゃんが過ごした1年半ちょっとを、読者は同じ速さで過ごしていた。
そう、このマンガを読んでいたんじゃなくって、一緒に過ごしていたんだと思う。
これは多分、このマンガの一番、ぜいたくな読み方だ。
コミックスとかで一気読みでは、多分、今、感じているこの、マグちゃんやルルちゃんとの近しさみたいなものを得られなかったと思う。
一番ぜいたくな読み方で、このマンガと寄り添うことができた幸運に感謝です。
それがいまだに続いている。
大好きなマンガだけど。ずっとアンケートいれてたし、コミックスも紙と電子、両方でそろえてるけど。まさかここまでダメージくらう最終話をお出しされるとは思わなかった。
前回、最終回じゃないとコメントしつつ、わざわざラストに「完」と書いたのはどういうことだ、と思ってたんだけど、前回までがマグちゃんとルルちゃんの物語で、今回はマグちゃんの物語なのかな、って思った。
もしくは、前回が日常系コメディとしての最終回で、ただコメディマンガとして楽しく終わって欲しいのなら、ここで終わったと思ってくれて良いですよ、という上木先生のメッセージなのかも、と。
でも、『破壊神マグちゃん』という物語は、こういう終わり方をするべきマンガだったんだな、と最終話を読んでものすごく納得した。
今になって思うと、「第43話 灯火の尽きる日」はこのマンガの折り返し地点だった。
長さ的にもだいたい中間地点だし。
「灯火の尽きる日」でルルちゃんはマグちゃんに、「来年も再来年も…これからもずっとあたしと一緒にいてね」と願い、マグちゃんは「うむ…よかろう」と応えた。
ずっと、誰かに面倒をかけることをおそれ、母親にも負担をかけまいと中学生にしては過剰な振る舞いをみせていたルルちゃん。
それは、そんなルルちゃんのことを理解しているおさななじみの錬くんが、風邪をひいた時にお見舞いにいくことを控えるほどのかたくなさだった。
そもそも、あれだけ娘を大事にしているお母さんが、中学生の娘に独り暮らしをさせる決断をしなければならなかったのも、そうしなければ母の枷になることをおそれるルルちゃんが、自分自身を追い詰めて壊してしまうと考えたからなんじゃないかと思う。
そんなルルちゃんが、マグちゃんに泣いてすがった。
それは、マグちゃんが人間だったら、絶対にしなかったことかもしれない。
父親が病気で弱って、どんどん死に近づいていく様を見届けたルルちゃんは、父の最期に「待って、やだよ…いかないで」と泣いてすがった。
それは無理な願いだとわかっていても。
でも、マグちゃんは「神様」だから、自分を置いて死ぬことはない。
どこにもいかないで、という願いを叶えてくれる存在だ。
ルルちゃんは、絶対に失われない、と信じられる存在に泣いてすがることで、ようやく心の安寧を得た。
そして、ここから、この物語は、ルルちゃんの喪失の物語ではなく、邪神たちの喪失の物語にシフトしていったような気がする。
大事だった少年を模り、人間を自分の思い通りの存在にしようとしたミュスカー様。
墓標の数を増やしながら身を削り続け、ありのままの人間の在りようを愛で続けるウーネラスさん。
その姿は、マグちゃんがたどるかもしれない未来を示していたんだろう。
けれど、マグちゃんはそのどちらにもならなかったんだな……。
ルルちゃんの「ずっとそばにいて欲しい」という願いを受け入れたマグちゃん。
でも、その願いの先にあるものが何かを、マグちゃんは知らなかった。
それを知っているミュスカー様とウーネラスさんも、それを教えることはしなかった。
多分、言葉で教えてあげられるものではないとわかっていたんだろうな。
年老い、死の床にあるルルちゃんに、懸命に空の美しさを説明していたマグちゃん。
以前、「今日はマグちゃんと空を見てるから、今のあたしは幸せだよ」ってルルちゃんが言ったから、もう外には出られない状態のルルちゃんに、ひとりで見た空の美しさを説いて、この世界にとどめようとしたのかな、って思った。
「…待て、頼む…。まだ逝くな…」
あの常に尊大な態度を崩さないマグちゃんが、「頼む」とせっぱつまって言った。
けれど、その願いは届かない。
「こうして感情を持たぬ破壊神は初めて孤独という感情を識った」
ルルちゃんの孤独を破壊してやると言っていたけれど、マグちゃんには実はその意味がわかっていなかったんだな。
ただ、自分がそばにいれば、ルルちゃんの孤独は破壊されると知ってただけで。
おっきなお目々に涙をたたえ、しょんぼりと歩くマグちゃんの姿が、あまりにもよわよわしくて、本当に泣ける。
本当に、こんなに線が少ない造形なのに……どうしてそう感じるんだろうな……。
「孤独」を知ってしまったマグちゃんのために、ミュスカー様は泣いてくれた。
イズマくんも、長年の友を失った悲しみに耐えながら、マグちゃんの気持ちを慮ってくれた。
ウーネラスさんは懸命に平静を装っているようにみえる。
ウーネラスさんとイズマくんは、ルルちゃんがいなくなって危険性が高まったから、という理由で封印すると言い出したけれど、マグちゃんを眠らせてあげたかっただけなんだろうね。
その眠りの中で、マグちゃんは再びルルちゃんに出会った。
マグちゃんが忘れないから、ルルちゃんも存在し続ける。
ルルちゃんは死という『破滅』の向こう側に『存在』していた。
マグちゃんの権能がここにつながるかよ……。
マグちゃんがルルちゃんの死を受け入れたことで、ルルちゃんは永遠の存在になったんだな……。
封印が解けたマグちゃんをみつけてくれたルリちゃんは、ルルちゃんの子孫かもしれないし、そうじゃないかもしれない。
それは多分、マグちゃんにとってはどうでもいいことだ。
ルルちゃんの物語は終わり、マグちゃんは少女の願いを叶えるという約束を果たした。
そして、マグちゃんの物語は終わらず、おっきなお目々で「ニンゲン」をみつめ続ける。
それだけだ。
けれどもう、マグちゃんは「ニンゲン」を「下等生物」とは呼ばないんだろうな。
ところであの狂乱食堂の中にはナプタークくんがいるのかな。
ミュスカー様が運命操作で、マグちゃんがあそこにたどりつくようにしてくれたのかもしれない。
ナプタークくんはからあげとプリンでマグちゃんを出迎えてくれるかもしれない。
いつか、ウーネラスさんとミュスカー様とノス子さんも、ひょっこり姿をみせるかもしれない。
全体的にキツイお話だったけれど、そんな楽しい想像ができる余地を描いてくださった上木先生に感謝です。
「皆様の温かさに包まれて無事完結に到りました!!」というアオリ文がめっちゃうれしかったです。
そして、GIGAに追加エピソード! それも錬くんメインらしい!
ここんとこ錬くんの出番がほとんどなかったけど、GIGAでめいいっぱい出すからだったのか?
上木先生は「誰かにとっての良い漫画になってたら嬉しいです」と巻末コメントに書いていらしたけれど、「良い漫画」どころではないです。
一生、大事にするに違いない漫画です。
ひとまず『破壊神マグちゃん』はこれで一区切り。
このマンガは、めずらしくリアルの時間の流れとマンガ内の時間の流れが同期していて、マグちゃんとルルちゃんが過ごした1年半ちょっとを、読者は同じ速さで過ごしていた。
そう、このマンガを読んでいたんじゃなくって、一緒に過ごしていたんだと思う。
これは多分、このマンガの一番、ぜいたくな読み方だ。
コミックスとかで一気読みでは、多分、今、感じているこの、マグちゃんやルルちゃんとの近しさみたいなものを得られなかったと思う。
一番ぜいたくな読み方で、このマンガと寄り添うことができた幸運に感謝です。
【週刊少年ジャンプ10号本日発売❗️】#破壊神マグちゃん 最終話掲載中です
— 破壊神マグちゃん公式 (@magmenuek_info) February 6, 2022
打ち合わせの時から何度も涙した感動の最終回です
…しかしまだマグちゃんは終わりません‼️
ジャンプGIGAにて追加エピソードが掲載決定🎉
さらに本日お昼の12時、ちょっとした告知もあります✨#破壊神マグちゃんイラスト部 pic.twitter.com/BALS5MWtQj