『逃げ上手の若君』(第11話 坊ちゃん1333) 感想

だんだんサブタイトルがよくわからない感じになってきてる……。


長寿丸こと時行に犬追物で負かされたのに、翌日には笑顔で手をふって諏訪大社に現れる貞宗……ハートが強い!
いや、なんか妙にかわいくみえてきたよ、貞宗。

ここらへんはちょっとギャグっぽかったけど、用件はかなりシリアスだった。

「北条に与した咎により、諏訪と郎党の領地のうち、諏訪湖以北を没収し小笠原領とする」という綸旨。
頼重の支配下にある土地が半分くらい削られて、貞宗に移管される感じか。

時間をかけ、資本と労力を投下して住める土地、稼げる土地にしようとがんばってきたのに、成果をそのまま吸い上げられるのは、そりゃ大変なことだよね。
でも、吸い上げる方はウハウハなわけで、そりゃあ貞宗もニッコニコになるか。

まだ尊氏と戦ができる状況じゃないから頼重は動きたくない。
でも、何もしなければ郎党たちの不満が噴出してくる。
生き神様と崇め奉られながら、こんなどうにもならない問題の解決を求められるって、頼重もしんどい立場だよなあ。

ところで、望月重信の髪型はあれどうなってんの?


風間玄蕃と名乗る盗人を「逃若党」に入れてはどうか、と提案してきた頼重。
そして、貞宗の元から綸旨を盗み出して欲しい、と。

綸旨を盗み出しても、命令がなかったことにはならないけど、それが帝のお言葉だという証拠がないから従わない、と言い張ることは可能なのか。
綸旨を再発行してもらうまで時間稼ぎができるとしても、根本解決にはなってないよな……。
まあ、その間にあれやこれややろうという算段はあるんだろうが。

ところで、点目の逃若党のみんなかわいいよね。
いずれこの絵でグッズ出たりするのかな。


風間玄蕃の名前を出した途端に、住民たちが瞬時に家にこもって戸締りしたとこ、なんか『魔人探偵脳嚙ネウロ』を思い出した。
てか、ここの住人たちの情報伝達速度はやすぎない? と思ってたら、風間玄蕃本人はもっとはやかった。
三里先で自分の名前がでたからとんできたって……。
おまけに、時行の正体もしっかり知っていた。

「身の破滅をちらつかせても狼狽しないな」って考えてるところをみるに、時行のことを探るために、しょっぱなから爆弾放り込んだ感じか。

貞宗に言わないから口止め料百貫文(=500万円)寄こせ、という玄蕃。
ここ「五百万円」て書いてルビで「百貫文」にしてるところが、松井せんせーらしいな、と思った。
だいたいは「百貫文」をメインにして、注釈で「現代換算で約五百万円」とか書くと思う。
おそらく、時代物としての空気感みたいなものよりも、読者のわかりやすさを優先してるんじゃないかな。

今の時行はお金をもってなくて、頼重に頼っている状況。
これを玄蕃は「借りが増えるほど主従は逆転し、信頼関係も失うぞ」って考えてるんだけど、ここからすでに計算違いがはじまってる。
時行は頼重の負担は考えても、借りが増えること自体は気にしないだろうし、頼重も時行への投資は惜しまない。そういう関係になってる。
でも、普通はそうはならない。玄蕃の考えている通りになるよね。


「金…まさか「金」とは…。本当にいいのか? 「国」じゃなくて」
いきなりスケールのでかい話になって笑った。
えっ? 国を褒賞にするのが普通だったの? って思ったんだけど、北条の息子の感覚ではそうなるのか?

金で話が済むのなら助かる。
国を求められると困る、か。

なるほど、これって冒頭でやってた領地没収の話にもつながるのか。
土地には限りがあるし、人々の執着もあるから、めちゃくちゃもめる。
だけど、玄蕃が本気で協力してくれるのなら、領地をあたえなければならないくらいの活躍はしてくれるに違いない。
それなのに、「国」ではなく「金」を望むのか! お金で済むのならこれほどありがたいことはない! というのが、支配者側だった時行の普通の考え方なのね。

でも、玄蕃はその感覚がわからないからグラグラしてる。
う~ん。王の器、すごいな。


今回の解説の、「国をあげるってどういうこと?」「幕府ってお金持ちなの?」はかなりおもしろかった。
解説読んだ後で、時行と玄蕃のやり取りを読み直すと、なるほどそういうことか、ってなる。
マンガ本編だけでもなんとなくわかるけど、解像度があがるというか。
この解説ページは本当にありがたいよね。