『逃げ上手の若君』(第37話 改革1334) 感想

「建武の新政」は企画倒れ感満載でぐだぐだになっていた。
日本史の授業で習った記憶はあるんだが、ちゃんと覚えてない。
後醍醐天皇はめっちゃ真面目に改革しようと思ったんだよね、実行力が伴わなかっただけで、みたいなイメージだった。

まあ、権利は認めてあげるけどその権利を奪ってる連中は自分で片づけてね、じゃあ、まさしく絵に描いた餅にしかならない。
やっぱり武力行使しかないってなる。
でも、武力行使だけになると、ただの乱世なわけで、みんな疲弊してしまう。

足利尊氏の郎党たちは凶悪面だけど、会話はめっちゃインテリ感あるな。
武だけではなく、ちゃんと学もある連中をそろえている。
紙幣の話で「中華の真似事よ」って言ってるし、さらに「向こう数百年は理解されまい」と注釈をつけてるからな。

一応、ちゃんと後醍醐天皇に敬意を示す言葉遣いはしているけど、郎党たちの想いは「全ては我が殿、尊氏様のため」で統一されているのが、尊氏の頭領としての格の高さを示している感じだ。


理想は高かったけど現実的ではなかった「建武の新政」と、時代の変化に対応できていなかったけど現実的ではあった鎌倉幕府か……。
古くてもダメ、新しすぎてもダメ、理想が走りすぎてもダメ、現実にただ対処するだけでもダメ、ってどの時代も抱えている問題だよね。


一方、護良親王は謀反の罪をきせられ、捕縛されたうえで尊氏に身柄を預けられることに。
身柄をおさえる時に、捕らえる側がみんな素手なのは、皇族に対して刃を向けることはできない、とかそういうことか?
めっちゃ美しいスクラム組んでるとこちょっと笑った。

それにしても、護良親王が本当に美人さんだな。
数多くの松井せんせーのキャラの中でも、トップクラスに美人じゃない?
なんかこう……色気があるよね。


二番目の改革者の立場を得るのが、改革を成功させる秘訣か。
これ読んで、『コードギアス反逆のルルーシュ』のゼロレクイエムを思い出した。

北条から政権を奪って、それを後醍醐天皇に献上したうえで、やっぱり武士が実権を握ってないとダメだ、という意識を武士たちに植え付ける。
そうして天皇家の信頼を削ぎ落し、自分の正当性を得る、というのはうまいよね。

格子で眼があからさまに隠された尊氏が、ページをめくると眼がたくさんある化け物になる、というのは『魔人探偵脳噛ネウロ』でよく使われた手法だけど、何度みてもギョッとするな。
あの姿、魔人様がやっててもおかしくない感じがする。

「大乱さえ起こらなければ」か。
まあ、起こるんですけどね、史実的に。


一方、諏訪の地でも、大乱の準備が進められていた。
北条郎党の生き残りを密かに匿い、戦の稽古をさせているとか、頼重は働き者だなあ。
行き倒れかけてたところを救ってもらった恩義があるから、そりゃあ、稽古に熱も入るってもんですよ。
このうえで、北条の正統後継者としてなんの不足もない時行が姿を現した日には、どれほどの熱狂っぷりがみられるか楽しみ。

諏訪神党三大将って前にも出てきたけど、弧次郎と亜也子はこのうちのふたり、祢津氏と望月氏の一族なわけで、それって諏訪神党に頼重だけじゃなく時行にも忠誠を誓わせたいという考えなのかな。
時行が自分の一族の者を取り立てている、というのは、信頼を得る材料になると思うので。
そうなると、雫は海野氏の血筋という可能性ある?


頼重は国司と戦をして、国司と争っている側の勢力を時行の戦力に加えるつもりらしい。
前回で亜也子の掘り下げが終わったので、ここからは戦の話になるのかな。
でも、雫の正体がボカされたまんまだし、吹雪の出自もまだ伏せられているから、そちらにいく可能性も期待してる。