『逃げ上手の若君』(第9話 小笠原1333) 感想

時行と貞宗の犬追物対決。
犬を射ても人を射ても得点になる、と言われれば、人を狙うのが武士というもの?
まあ、頼重にあれだけあおられたらそりゃそうなるか。


頼重、ちゃんと時行が勝てるように仕込みしてたんだな。
てか、接待用に調教した犬ってなに?
そんなわけあるか、って感じなんだけど、お偉いさんがきた時にいい気分で帰ってもらうためにわざわざそういうのを用意しているとはさすが諏訪大社、って感じもする、という絶妙なとこをついてくるのが、実に松井せんせーらしい。
あと、犬追物に対する動物虐待的な嫌悪感を、犬にもメリットあるんですよ、的にちょっとやわらげてる面もあるのかな。


弓の速さを、飛んでくる野球ボールや走る新幹線の絵で表現してるの、めっちゃおもしろい。
時行がどんだけ逃げ上手なのかが感覚的にわかる。
「当時の弓矢の速度は現在より遅く避ける事は不可能ではない」って言われても、やっぱり普通は避けられないと思うけど、プロ野球選手はものすごい速度で飛んでくるピッチャー返しのボールとかにもちゃんと反応してたりするから、不可能ではないんだろうな、って感じになる。


頼重が描いたシナリオ通りにことは進む。
頼重すごいし、ちゃんと避けきってる時行もすごい……けど、貞宗もすごかった。

「焦りと迷いと狙われる恐怖で冷静さを失い、犬もろくに射れなくなる事でしょう」
この一点を頼重は読み誤った。

冷静に獲物を追う武人の眼になってる貞宗、めっちゃかっこええ!
手綱も持たずに悠々と馬を旋回させてる絵とか、本当にかっこええ。

追い詰められて逆に冷静さを取り戻すとは、さすがに戦場を駆け抜けて生き延び続けてきた歴戦の武士だけのことはある。
時行においつめられパニクった五大院とは器が違うな。

「千里眼鬼・小笠原貞宗」のフォントの「原」の中央が眼っぽくなってるのもかっこいいよね。


頭を射られ、血を流し、「本物の矢だったら死んでた!」ということを理解しているのに、それが「たのしい!!」ってなる時行……やっぱり変態さんだ……。

貞宗の異常な強さを描いたうえで、時行の異常性が描かれるの、めっちゃ楽しいな。
そして、時行がやっぱりめっちゃかわいい。


貞宗はすごいけれど、時行の異常性を知らない。
だから、時行の行動の意味を読み取ることができない。
それがどう勝負の行方に影響するのか楽しみだ。


ところで巻末コメントのとこのタイトルが「逃げ上手の若者」になってて笑った。
なんかノンフィクションでこんなタイトルありそう。
こういうのってテンプレートがあって位置を入れ替えてるだけなんじゃないの? 毎回、打ってるの?