『アンデッドアンラック』(No.110 死神) 感想(正義をかざし、死を与える者)

瀕死のラトラを抱えるリップが映るスクリーン(?)をみつめるアンディ。
そこに現れたヴィクトル。
ヴィクトルの気が向けば、アンディと話し合いができるのか。

「…お前がこのまま心の底から負けを認めれば、ポイントは奴らに移る」って、そういうシステムだったの?
ポイントを譲るってことを「ルナ」に宣言する、とかそういうシステムなのかと思ってた。
だとしたら、ジーナさんのポイントがアンディに譲られてる可能性もあるのかな。
ジーナさん、50年もポイント貯めてたらかなりなもんになってそう。


アンディがヴィクトルに変われば、「不治」は対象者を失って解除できるのか。
「不治」もいろいろとルールの抜け穴がある。アンディにしかできない解除方法だけど。
でも、一度、その手を使ったら、今度はアンディからヴィクトルに変わることそのものが「治療」と認識される可能性もあるな。
医学的な「治療」ではなく、本人が「治療」と認識した行動、というルールのあいまいさをリップは有効活用してるんだな、って今さら思う。


ヴィクトルはアンディに、自分自身の「正義」を問う。
リップの「正義」を超えるアンディの「正義」が認められなければ、ヴィクトルはアンディを救わない、と。

ヴィクトルにとって「正義」ってのは重要なもので、それはジュイスさんが「正義」を自分自身の行動理念としているから。
ジュイスさんが「正義」なんてどうでもいい、とか言い出したら、ヴィクトルにとってもどうでもいいものになりそう。
ヴィクトルにとっての行動理念はジュイスさんだから。

でも、ジュイスさんにとって究極の「正義」は、ヴィクトルに笑って欲しいっていうことで……。
「好きな奴の笑った顔が見たいんだ」
「それが死ぬ程難儀だ」
というアンディの言葉は、そのままジュイスさんの気持ちのように思える。

そして、
「ただ一人の女をその手で救いたい」
「そこにはゆるがぬ正義がある」
というリップを評したヴィクトルの言葉は、そのままヴィクトルのことを示しているようにも思える。


「味方だろうが敵だろうが、自分と関わった人が不幸になりゃ腹から笑っちゃくれない」
誰かの生死の取捨選択を迫られる状況に追われ続けていて、全部を救うことなんてできないとわかっているけれど、それでも仕方ないよねって受け入れることができないのが風子ちゃんだ。
それは狂的とも感じるところなんだけど、そういう性質だからこそ「不運」なんていう能力が与えられたんだろうな、って思うんだよね。


リップがループしたら、ライラを救えて、ラトラも幸せになるかもしれない。失恋はするだろうけど。
でも、ライラが手術で死ななかったとしても、その数年後にはラグナロクで死ぬことになる。
リップには「神」と戦って勝てる見込みがない。
そこらへんリップも自覚してるんだろうけど、どうしても、自分とラトラがライラを殺した、という事態をキャンセルしたいんだろうな。


風子ちゃんを「アーク」に乗せて、アンディと風子ちゃんだけで次のループに渡って、ユニオンを再構築して「神」との最終決戦に挑む展開になるか……。
予想はされていたけどしんどいな……。
それって、アンディ(+ヴィクトル)と風子ちゃん以外全滅ルートじゃん。
次回のループで救われたとしても、今回のループでは救われない、という事実は覆らないじゃん。

ヴィクトルにしたって、ジュイスさんの死を見届けなければならなくなる。
ヴィクトルは、もう無理をするジュイスさんはみてられない、ジュイスさんを死なせてやりたいって考えてたから、それで本望かもしれないけど。


いつ、どのような形で、否定能力による悲劇が起きたか、を把握していれば、犠牲者を救うことは可能だろう。
シェンの妹のメイちゃんが崖から落ちても受け止めてあげるとか、チカラくんの両親が動けなくなってもトラックをチカラくんの視界外で止めるとか、安野先生が拾う前に「Gライナー」を回収するとか、アンディなら簡単なことだし。

でも、ユニオンにしてもアンダーにしても、否定能力で大事なものを失ったがゆえに戦に身を投じた者がほとんどだから、アンディと風子ちゃんがみんなの悲劇を救えた場合、「神」と戦う理由を失う。
そしたら、ユニオンにも参加する理由がなく、ユニオンの再構築は叶わなくなりそうなんだけど、そこらへんはどうなるんだろうね。

前々から気になっていた、名前だけ出ているアーティファクト「リメンバー」が、名前からしてループを超えて記憶を持ち越す機能を持ってる可能性がありそうだけど。
でも、新しいループで、大事な人を失わずにすんで、それでも戦ってくれるものなのかな。
シェンとファンは戦ってくれそうな気がするな。

ところで、ボイド、ヴィクトルに忘れられてなかった。よかった。


アンディはこのループに存在するものを捨て、次のループに存在するすべての運命を背負う覚悟を決めた。
すべては風子ちゃんの笑顔のために。

「その為ならばオレは死神にでもなる」
ヴィクトルは「戦神」でアンディは「死神」か……そうか……。

なにげにアンディとヴィクトルの目標が、ついに一致したような気がする。


一方、ラトラの最期を看取ろうとしているリップ。
涙を流してるけど、笑おうとしている表情が痛々しい。
ラトラのおかげだよ、ありがとう、って伝えたいのかな、って思う。
ごめんなさい、よりもその方がラトラは喜ぶから。

そんなリップの背後に立つアンディは、本物の「死神」にみえる。
禍々しく、ラトラを静かに見送るまで待ってくれる慈悲さえない。

ただのロープと歯車でできてる義肢が砕ける絵には泣いた。
アーティファクトなんだから、そんな玩具っぽいつくりでもおかしくないんだけど、これを手に入れるために注がれた労力と、自分の手足を切り落とす覚悟と痛みを思うと、こんなちゃちいものにリップは文字通り身を削ったのに、その結末がこれかよ。

前回で、アンディとリップの共闘ルートは消えたか、って思ったけど、それよりさらにひどいルートをお出しされたよ……。


どうすんのよ、これから。
今回は捨てルートになることがほぼ確定的だけど、少なくとも風子ちゃんの魂を「ゴースト」から取り戻す、というミッションだけはこなさないといけないよね。
ルインもここでどうにかしておかないと次のループも大変なことになりそうだし。

あと、めちゃくちゃなことやってるけど陽気で親切なおじさん、だったアンディがリップとラトラを殺す場面を目撃してしまったであろうルーシーがかわいそすぎる。